サラリーマンと自営業では優先順位が違う

ただし、図2のパターン④、つまり自営業の人はサラリーマンに比べて公的年金が非常に少ないため、自営業の人に限っては3層目の自助努力はとても大切です。そのために自営業の人しか利用できない有利な制度はたくさんあります。

大江英樹・大江加代『知らないと損する年金の真実【改訂版 2026年新制度対応】』(ワニブックス【PLUS】新書)
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たとえば国民年金基金は公的年金に上乗せして受け取る仕組みですし、最近話題になっているiDeCoも自営業の人はサラリーマンに比べて利用できる金額の枠が大きくなっています。他にも国民年金保険料に上乗せして支払うことで給付額を増やすことができる付加年金(※5)、そして小規模企業共済のように年齢は関係なく大幅な税制優遇を得られる制度もあります。

自営業の人はこれらの制度の中から、自分が利用しようと思う制度を選び、自分で老後資金を作るという努力は若い内からやっておくべきです。

一方、サラリーマンの場合は違います。多くの金融機関は「年金なんて当てにならないから、投資信託を買いましょう」とか「保険に入りましょう」と言ってきますが、それを鵜呑みにして変な金融商品を買う方がよっぽど老後は不安になります。

自分のケースはどうなのかを考えて、3層目をどう作るか、どれぐらい豪華な造りにするかを考えるべきです。くれぐれも順番を間違えてはいけません。

※5 付加年金(日本年金機構ホームページ)

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

1952年大阪府生まれ。オフィス・リベルタス創業者。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行った。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に『投資賢者の心理学』(日経ビジネス人文庫)、『定年男子 定年女子』(共著・日経BP)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『お金の賢い減らし方』(光文社新書)など多数。2024年1月没。

大江 加代(おおえ・かよ)
確定拠出年金アナリスト

大手証券会社にて22年間勤務、一貫して「サラリーマンの資産形成ビジネス」に携わる。確定拠出年金には制度スタート前から関わり、約10年間投資教育の他、運営実務のサポート業務に従事した。2012年9月に大江英樹とともにオフィス・リベルタスを設立。2022年9月に代表取締役に就任。現役世代の資産形成・定年前後のライフプラン等をテーマとするセミナーや研修での講演の他、各種マスコミや媒体への寄稿等を行っている。著書に『「サラリーマン女子」、定年後に備える。』、『新NISAとiDeCoで資産倍増』(ともに日経BP社)、『iDeCoのトリセツ』(ソシム社)、『定年後夫婦のリアル』(大江英樹と共著・日本実業出版社)など。