1年で10万部も頒布される皇室カレンダー

皇室カレンダーを頒布はんぷしているのは、皇室の文物の管理公開や調査研究を目的に設置された公益財団法人菊葉文化協会である。この組織は1993年に財団法人として設立された。財団に関する法律が改正されたことで、2012年には公益財団法人に移行している。

菊葉文化協会では、皇居や京都御所などの環境保全や維持管理に協力するとともに、最近、愛子内親王が毎回鑑賞に訪れている雅楽についての小冊子なども刊行し、その啓蒙につとめている。

菊葉文化協会が皇室カレンダーを頒布するようになったのは1995年からのことで、30年の歴史を重ねている。途中、2003年にはリニューアルが行われた。壁掛けのカレンダーが大型化し、あわせて卓上型も頒布されるようになったのだ。

壁掛けだけで1年に10万部も頒布されるというから大ベストセラーである。SNSなどを見てみると、実家に皇室カレンダーを飾っているという声が数多く上がっていた。

昭和天皇の和歌による御製カレンダー

売店ではもう1つ、「昭和天皇御製カレンダー」も頒布されている。こちらは昭和天皇の「聖徳」を後世に伝えるために設立された公益財団法人昭和聖徳記念財団によるものである。

御製とは、天皇の詠んだ和歌のことである。カレンダーはやはり2カ月ずつで、昭和天皇個人の写真、宮内庁のページで最近実録が公開されて話題の香淳こうじゅん皇后との夫婦の写真、そして一家の写真などで構成されている。

昭和天皇・香淳皇后両陛下(1946年撮影)
昭和天皇・香淳皇后両陛下(1946年撮影)(写真=AFP database/PD-Japan-oldphoto/Wikimedia Commons

来年2026年のものでは、昭和天皇がローマ教皇だったヨハネ・パウロ2世と1975年に会見したときの写真も9、10月の箇所に掲載されている。その月の御製は、「あめつちの 神にぞいのる 朝なぎの 海のごとくに 波たたぬ世を」という平和を願っての歌である。これは、1933年の歌会始で詠まれた戦前のものである。この歌には今では曲がつけられ、さまざまな神社で「浦安の舞」として舞われている。

「昭和天皇」といっても、今の若い世代にとってはまさに歴史上の人物である。御製カレンダーを買い求め、それを家に飾っておくのは、かなり上の世代であろう。皇室カレンダーの場合にも、上皇夫妻が大きく取り上げられているわけで、やはり年上の世代を主なターゲットにしているものと思われる。

それにどちらも、おかたい財団が頒布しているもので、天皇や皇族はかしこまった姿で写真におさまっている。皇室に対して親しみが湧くものになっているかといえば、そもそもそういった性格のものではないのかもしれない。