背景にある「親の生い立ち」「心の傷」

このように、お子さんを許せない理由は、親御さんご自身の「生い立ち」に深く関係しています。

他にも、たとえば兄弟姉妹との比較の中で、傷つきを抱えている親御さんもいらっしゃいます。

「妹はすごく親に可愛がってもらっていた」
「お兄ちゃんはすごくできる子だったから、いつも親からの賞賛を浴びていた」
「でも私は違った。『あなたはちゃんとしないとね』『ちゃんとできる子でしょ?』と、親に“いい子”として育てられた」

親の期待に応えようと、なるべくそうあろうと思って真面目に頑張って生きてきた。

食器洗いのお手伝いをする女の子
写真=iStock.com/SunnyVMD
※写真はイメージです

でも、心の奥では「本当はそんなに“いい子”でいたくもなかった」「もっと“いい子”じゃない自分でも、親に受け入れてもらいたかった」という気持ちを抱えていたりするのです。

そうすると、どうなるか。

今、目の前で“いい子”でいない我が子に対して、「何であなたはそんなに“いい子”でいないの!」とイライラしたり、許せない気持ちになったりします。

「このままだと、世の中を渡っていけないんじゃないか」と強い不安や悲しみに襲われてしまうのです。

こうした心の奥にあることは、ご自身が幼少期に経験した、すごく昔に起きたことだったりするので、親御さん自身もすぐに思い出せなかったり、自覚がなかったりします。

目の前の子どもにモヤモヤしたり、イライラしたり、ぐるぐる悩んだりするけれど、その「本当の理由」が分からない。

その理由はほとんどの場合、親御さんのその生い立ちの中に眠っていることが多いです。このことに気づくだけで、解決への一歩を踏み出すことができます。

子どもが不登校、ひきこもりになる原因

ところで、親御さんが「自分を許せない」でいると、なぜお子さんは不登校やひきこもりになってしまうのでしょうか。ここには、家庭内の「空気感」の変化と、お子さんの「エネルギー切れ」というメカニズムが関係しています。

親御さんが「○○すべき」「○○せねばならない」と自分を律して生きていると、家庭の中にもその空気が充満します。言葉に出さなくても、「ちゃんとしなきゃダメだよ」「頑張るのが当たり前だよ」という無言の圧力が、お子さんに伝わり続けるのです。

実は、不登校になるお子さんの多くは、親御さんの期待に応えようとする優しい子や、真面目な子が多いのです。親御さんが「自分を許さず頑張っている」からこそ、お子さんも「僕も頑張らなきゃ」「私もちゃんとしなきゃ」と、家庭のルールに合わせて必死に頑張ります。

しかし、学校生活や人間関係でつまずいた時、あるいは心身ともに疲れてしまった時、彼らは家で休息をとることができません。なぜなら、家は「ダラダラしてはいけない場所」「頑張り続けなければならない場所」になっているからです。

「弱音を吐いたら怒られるかもしれない」「休みたいなんて言ったら、親をガッカリさせるかもしれない」

そうやって、外でも家でも気を張り続け、限界まで「いい子」でいようと頑張った結果、ある日突然プツンと糸が切れてしまう。それが、不登校やひきこもりの正体であることが多いのです。つまり、「親御さんが自分を許せていない」ことによる緊張感が、お子さんの逃げ場をなくし、エネルギーを枯渇させてしまっているのです。