ダラダラとしている子どもが許せないケース

親御さんが「自分を許せていない」とは、どういうことか。分かりやすい例を挙げてみましょう。

たとえば、お子さんが家でいつもダラダラ過ごしているとします。好きな時間に寝て、好きな時間に起き、スマホやゲームばかり。

ソファでゲームをしている女の子
写真=iStock.com/Hakase_
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一方、真面目な親であるご自身は、仕事もしているし、家事だって、責任感を持って一生懸命頑張っている。

「どうして私はこれだけ頑張っているのに、この子はこんなにダラダラしているんだろう」
「親のありがたみも、今の人生への感謝もなく、大切な時間を無駄にしている」

そんな風に感じて、イライラしたり、悲しくなったり、様々な感情が湧き上がってくることはないでしょうか。

この時、あなたは「お子さんを許せない」と感じていますが、実はその根底には、「ダラダラ過ごす自分を許せていない」という可能性があります。

もし、親御さん自身が「ダラダラしてもいいし、頑張ってもいい」と、その両方を自分に許可できていたら、どうでしょうか。きっと、適度に頑張り、適度にダラダラして、心の余裕が保てているはずです。

しかし、「頑張らなきゃいけない」「家のこともちゃんとやらなきゃいけない」「仕事で責任を果たすのは当たり前だ」と真面目に強く思っていると、知らず知らずのうちに自分を追い込み、余裕がなくなっていきます。

そんな親御さんから見ると、何の責任も感じずにダラダラしているお子さんの姿は、「許しがたいもの」として映ってしまうのです。「私はこんなに我慢しているのに」という思いが、お子さんへの苛立ちに転換されてしまうのです。

進路選びに真剣でない子どもに腹が立つケース

もう一つの例は、進路などを「なかなか決めない」お子さんに対する苛立ちです。

「進学するならする、しないならしないで、早く決めてくれたらいいのに」
「いつまでウダウダ悩んでいるの。いい加減にしてよ」

そんな風に感じてしまう親御さんのお話をゆっくり聞いてみると、多くの方がこうおっしゃいます。

「私は今までの人生、決断を迫られた時には、その都度ちゃんと決めてきた」

そういう方は、人生の岐路において、ウダウダせずに「こうする」と決めてこられた。それはつまり、「ウダウダと悩むこと」や「人に悩みを聞いてもらったり、弱みを見せること」を、ご自身がしてこなかった、あるいは「してはいけない」と自分に禁じて生きてこられた、ということなのです。

ご自身の生い立ちの中で、親に頼れなかったり、周りに弱さを見せられなかったりした経験から、「自分で決めて進むんだ。それが強く生きることだ」と真面目に決意し、頑張ってこられたのかもしれません。

すると、いつまでも進路を決めないお子さんに対して、「いつまでそんなことやってるの?」という“許せない気持ち”が、どうしても出てきてしまうのです。ご自身が封じ込めてきた「弱さ」をお子さんが見せているように感じ、それが受け入れ難いのです。