料理上手だった向田の手料理のおいしさ

久世さんは「薩摩芋のレモン煮とか、顔を顰めるくらい酸っぱい梅干し」をいただいたそうだけど、私が向田さんの手料理でおぼえているのは(あまりに数多くいただいたせいで、かえって、よくおぼえていないのだけど)、茄子の煮びたしとか、古漬けをきざんで覚弥かくやにしたものとか、長ネギのアツアツ油かけとか、サヤインゲンとおろした生姜をえたものとか、ったところでは、トビウオのでんぶとかを出してもらった。

どうやら、そんな料理は、向田さんの『父の詫び状』に出て来る、あのお父さまの晩酌のさかなのために、手早く、珍しく、おいしいものをと、考案されたものが多かったようだけど、お酒を飲まない私はごはんのおかずとしていただいて、どれもこれも、おいしかった。「スプーン2杯入れたら、あら不思議、たちまちサッポロの名店の味に!」というフレコミの、ご自慢の自家製タレをたらしたインスタント・ラーメンもおいしくて、そのタレを少し、わけてもらったこともある。