思春期の「成長スパート」を逃さない

第二次成長期である思春期には、急速に身長が伸びる「成長スパート(加速)」が訪れます。成長軟骨である「骨端線」から新しい骨が作られ、骨の長さが増すことで身長が伸びるのです。そうして思春期の後半になると徐々に骨端線が閉じ、女子では16歳前後、男子では18歳前後で閉鎖し、身長の伸びはほぼ終了します。

女子は10〜12歳頃に成長のピークが来て、初潮の少し前に最大の身長増加があります。年間で6〜10cm前後、思春期全体で20〜25cmくらい伸びます。よく「女の子は初潮が来ると背が伸びなくなる」といわれますが、これは誤解を招く表現です。思春期に入ると、女性ホルモンの一種・エストロゲンの分泌量が増えますが、このホルモンには骨端線を閉じる作用があります。初潮が来るのは思春期の始まりから2〜2.5年後なので、ちょうど骨端線が閉じる頃。初めての月経が来てからも身長は伸びますが、成長のスパートのピークは過ぎ、身長の伸びが終わりに近づきつつあります。だから月経が成長を止めるのではなく、月経が来るのが成長期が終わるというサインです。

一方、男子は12〜14歳頃、声変わりや筋肉増加と同時に成長のピークを迎えます。年間8〜12cm前後、思春期全体で約25〜30cm伸びます。活動量が増え、必要なエネルギーは大人より多くなるので、年齢相当のカロリーを摂って、エネルギー変換に必要なビタミンBも不足しないようにしましょう。

タンパク質とカルシウムとビタミンD

さて、成長期には、男女とも特にタンパク質、カルシウム、ビタミンDをよりしっかり摂る必要があります(※2)。タンパク質は、肉や魚、豆などで摂りましょう。カルシウムは、牛乳などの乳製品、小魚、青菜などで摂ってください。骨密度のピークは20歳前後で、以降は減っていきます。ピーク時の骨密度が低いと骨粗鬆症のリスクが高くなりますから、成長だけでなく将来のためにも重要です。

※2 厚生労働省「第6次改定日本人の栄養所要量について

カルシウム豊富な食べ物
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「動物性食品である牛乳は血液を酸性に変え、それを中和するために骨からカルシウムが溶出するのでよくない」という説がありますが、大間違いです。牛乳を飲むと骨粗鬆症になるという研究結果はなく、むしろ継続的に牛乳を飲んでカルシウムを摂取していると骨折を防げるという研究結果は多数あります(※3)

牛乳に限らず食物で血液のpHが酸性になったりしませんから、骨からカルシウムは溶出しません。牛乳のカルシウムは吸収率が40%と高く、小魚や野菜よりも高いのです。骨の成長に必要なタンパク質とカルシウムが同時に摂れるので、普段の食事に牛乳を加えるのは、成長期の子どもにとってとても効率のよい栄養の摂り方です。

ビタミンDは、魚やきのこ類に多く含まれています。近年、ビタミンD不足から「低カルシウム血症」となり、低身長になったり、骨が弱くなる「くる病」になったりする子がいて、小児科では気をつけて診ています。また、ビタミンDは日光を浴びることで体内で作ることもできるので、屋外活動もおすすめです。

※3 一般社団法人Jミルク「牛乳の気になるウワサをスッキリ解決!