適度な運動と十分な睡眠も必須
身長を伸ばすには、栄養をバランスよくしっかり摂ることのほかに、適度な運動も欠かせません。運動をすることで骨に荷重や引っ張る力がかかると、骨芽細胞が活性化されます。さらに成長ホルモンの分泌も増が増え、IGF-1(インスリン様成長因子1)を介して、やはり骨芽細胞の働きが促進されて骨が作られるのです。そして腸管でのカルシウム吸収率が高まり、骨への沈着がよくなることで強い骨が形成されます。
また、運動は筋肉に微細な損傷を与え、その損傷を修復する際に筋肉は増えます。運動によって骨と筋肉は相互に発達を支え合うため、適度な運動や荷重刺激は、第二次成長を最大化したりするので欠かすことができないのです。
また、健やかな成長には睡眠も大切。骨を伸ばしたり、タンパク質を合成したり、脂肪を分解したりする成長ホルモンは眠りはじめにたくさん分泌されるからです。小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間程度の睡眠をとることが推奨されています(※4)。しかし、何時までに寝ないといけないという決まりはありません。
以前、「午後10時〜午前2時までが睡眠のゴールデンタイムで、その時間に眠っていないと成長ホルモンが出ない」という説がありましたが、これは噂に過ぎず、寝るたびに成長ホルモンは分泌されます。一日の中で何度分割して眠ってもです。確かに早寝早起きをして規則正しい生活をするのは、概日リズムができてよいことですが、ゴールデンタイムに寝かせないと背が伸びないということはありません。
※4 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」
背を伸ばす特別な器具や運動はない
さて、子どもの身長に関しては親御さんの関心が高いので、さまざまな商品が発売されています。背を伸ばすとされているストレッチ器具、背を伸ばす運動法についての本や動画などが売られています。しかし、残念ながら効果はほぼないでしょう。ただ、姿勢がよくなったり、体の柔軟性が上がってケガをしにくくなったりするという効果は期待できそうです。
「ジャンプをすると背が伸びる」という説もありますが、全身運動ならジャンプに限らず、なんでも骨に対しての刺激になります。特にランニング、球技、水泳などは、全身の筋肉を使い骨に負荷をかけるので、骨密度をあげて骨を強くします。ですから、体育や部活などでそういった運動していれば、わざわざ頑張ってジャンプをする必要はありません。
そして、運動をすればするほどよいということではないことも見逃せないポイントです。運動のしすぎでエネルギーや栄養が不足すれば成長するどころかやせてしまいますし、貧血に陥ったり、女子なら無月経になったりすることもあります。また、疲労骨折や成長軟骨障害、野球肘、テニス肘といった骨や関節の障害が出ることがあるので、注意が必要です。


