母親の存在は「ヨロイのような安心感」
「自分の親世代は学校での悩みを話しても、『先生に言われた通りにしろ』だけでした。でも今は、学校や先生も絶対的な存在ではなくなっています。常に子ども側の立場に寄り添ってアドバイスしたり必要ならサポートしたりしているから、信頼して何でも話してくれるんだと思います」
私たち生活総研の親子インタビューに応じてくれたあるお母さんが語ってくれました。
このお母さんについて、娘さんは「身近で安心できる、強い存在。ヨロイのような安心感」と表現していました。かたい信頼で結ばれていることが伝わってきます。
子どもの反抗期がなくなってきた要因として、Z世代とその親は社会の価値観や通ってきたカルチャーが似通っており、ベースとなる「分かり合える感覚」があることは確かです。反発の機会は減り、親子間の距離感もぐっと近いものになっていると分析できます。
さらに反抗期が減ってきている理由に踏み込むと、コアZ世代である19〜22歳が幼少期のころには、子ども本人の意思や気持ちを尊重する「自己肯定感を育む子育て」が広まりつつあったことも無視できません。実際に、私たち生活総研が実施した「子ども調査」では、1997年から2017年の20年間で、「お父さん、お母さんは自分の話をよく聞いてくれる」という項目の値が上昇しています。
「反抗すべき親が減った」という実態
反抗期は、本来「上からの支配」に対する反発として生じる、いわば作用・反作用の関係にあります。
親が頭ごなしに叩いたり叱ったりしてこないうえに、同じ興味・関心を共有できる「理解ある存在」となり、さらに子どもを尊重して肯定の姿勢で話をじっくり聞いてくれる。そんな親であれば、そもそもの「作用」が生まれません。
これらの背景を踏まえると、反抗期の減少を若者の気骨がなくなったから、軟弱になったからだと考えるのは、正しい捉え方ではなさそうです。「子どもたちが反抗しなくなった」というよりも、実態としては「反抗すべき親が減った」のです。
もちろんこれも、気骨のない親が増えてけしからんな、というような話ではありません。教育方針も含めた個人を尊重する価値観や、親子が共有できる文脈やカルチャーが大幅に増加した結果として起こっていることなのです。


