上下関係の権力的なアプローチを用いず、馬場はどのように組織をコントロールしているのだろうか。定期的な会議は現場部門のチーフと行うだけで、あとは朝礼があるのみ。しかもパートナーは人数が多いうえ、1日に働く時間が4時間程度であることが多い。そこで馬場が行っているのが「自分から現場へ出向いて話をする」。

「犬塚さんのような各部門の中心人物とコミュニケーションを取る。仕事の話だけでなくバカ話もします。ただ、長話をしていたら仕事が滞りますから、1日にそういう時間が10分取れたらいいほう。教育には時間がかかります。その回数をどれだけ増やせるかです」(馬場)

デイリー部門の発注を任されている犬塚は、馬場から多くのことを教わっていると言う。ただし、馬場はパートナーに数値目標を持たせていない。業種や社員とパートの違いはあるにせよ、この点はグーグルや富士ゼロックスとは異なる。その理由はなぜか。

「店が楽しくなくなるからです。一時期、大赤字で売り上げばかり言わないといけない店を任されたことがあるのですが、お店が楽しくなくなってしまった。そうすると従業員は早く帰りたくて店で買い物もしてくれなくなります。お客様の来ない店には暗い波動があって、いい波動がある店にはお客様が来てくれる。波動という表現は非科学的ですが、たとえば従業員が殺人的に忙しく働いている店にその友達は来ないし、余裕があって楽しく働いている店には『○○ちゃんがいるから行こう』となりますよね」(馬場)

一方で、パートナーが多くの仕事を任されるのは負担が大きくないか。そう犬塚に尋ねるとそれは逆だという。

「私が発注したものが売れると楽しいし、やりがいを感じます」(犬塚)