上司の指示を待って動くのではなく「お客様に喜ばれるには」を常に頭に置き、同僚と連携しながら適切な行動を心がける行為が顧客に感動を与えるのだ。

取材はラウンジの一角で行われたが、確かに営業スタッフ同士でさりげなくアイコンタクトをとったり、すれ違いざまにこまめに情報交換したりする様子が見られた。誰に命令されたわけでもなく、ルールがあるわけでもないが、フロア全体を10分間に1度はスタッフの誰かが巡回し、顧客が「ちょっとすみません」と要望を言いやすいようにしている。

社員採用時には、前述のように1人あたり200時間もかけて面談する。幹部たちが繰り返し学生に問うのは「何のために働くのか」だ。今の学生の会社選びの基準は、会社の知名度、規模、給与・賞与の高さ、福利厚生などに偏りがちだ。

「実は、不人気職種の自動車ディーラーは、人材採用が有利なんです。知名度や給与水準などを満たそうと手をあげてくる応募者はいませんから(笑)。

何のために自分が働いているのかがわからないのなら、正直それは、牛や馬と同じではありませんか。再三にわたって『なぜ』を繰り返すことで、人の役に立つことや自分の成長そのものが『喜び』なのだと気づいてくれた人を採用するのです。自動車販売を通じて、お客様や同僚との絆を深めるプロセスこそが『喜び』と気づくこと。それがネッツトヨタ南国の原動力なのです」(横田)

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(芳地博之、プレジデント編集部=撮影 ビスタワークス研究所=写真提供)
【関連記事】
高級車月3台売るヤナセ式「大車輪営業」の育て方
300社調査! ダメ営業の理由、14倍売る人の理由
「年収1億円」富裕層は営業マンのどこを見るか
突然、未経験の営業に異動。まず何をすべきか
鈴木敏文流「疲れさせず、退屈させない営業話法」【1】