なぜ不人気業種が人材採用に有利か

ラウンジの連携にも特徴がある。ここにはフロアマネジャーが1人もいない。通常、司令塔役や現場責任者なしでは指揮系統がバラバラとなり効率のいい接客ができない。だが、同社ではあえてフロアマネジャーを置かず、従業員がそれぞれ自律的に動き回り、人手が不足していたらサポートに走る。それは、さながらサッカー選手のようである。ピッチでポジションを自在にチェンジさせて、攻めたり守ったり、同僚と連携するのだ。

「ここで動く従業員はフロア全体を頻繁に見回しています。きっとノルマに汲々とするディーラーの営業よりずっと守備範囲が広いはずです」(横田)

新車・中古車販売など営業スタッフ内には班が設けられているが、大きな企業にありがちなセクショナリズムなど障壁もないという。社内コミュニケーションをよくするためによく言われる「報告・連絡・相談」について、大原はこう話す。

「当社は報連相の『ルール』はいらない、と考えています。そういう形式的に押しつけたものではなく、自分たちが必要と感じる自然な形での濃密なコミュニケーションを積み重ねていくことが大事なのです。

アメリカのように、ルールをつくり、結果をまず求めてしまうと、経験のある上司が徹底的にノウハウを叩き込むところからはじまります。すると、短期的には効率がいいのですが、いつまでも思考力が高まらないため、さらに上司が管理し、マニュアルをつくらなくてはならない悪循環になります。

逆にうまくいかないことは承知のうえで、まず経験をさせ、人間関係への気配りや思考の質を高めます。すると結果が出るようになり、モチベーションも上がるという相乗効果を生むのです。これこそ本来の日本型組織の強さであると考えます」