短距離ランナーよりも長距離ランナーの人材

もちろん、口先だけで評価される世界であれば別でしょう。しかし、ワタミグループは「額に汗しないで稼ぐお金はお金ではない」と定めています。コツコツと地味な仕事を続けている会社です。

ですから、知識や理論に行動がついてこなければ、どんなに美辞麗句を述べても評価はされません。行動すること、そして同じペースで継続することが何よりも大事なのです。たとえていえば、短距離ランナーよりも長距離ランナーの人材です。

「人間が働くのは、お金を儲けるためではなく人間性を高めるためである」

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経営者が新入社員に求める素質は、コミュニケーション能力だ!

これが僕の信念です。コツコツ仕事を続けていると、必ず人間性は高まります。だからワタミグループは、よけいな分野への投資をせず、コツコツ型の事業しか手掛けていないのです。

これからの日本は人口減少社会に入り、国内市場の大きな伸びは期待できません。新規の顧客を追いかけるよりも、既存顧客を深掘りすることが求められるということです。そういうなかでは、コツコツと努力を積み重ねる生きかたが見直されてくると思います。

一方、コツコツ型の人と対極にあるのが、ハッスルしすぎたり、飲みすぎたり、食べすぎたりする人です。そういう何ごとにも「すぎる」人は、うわついている感じがしてよくありません。

そういう人は、自分を常に客観視することで、考え方の基本を矯正していくといいでしょう。お勧めしたいのは、日記を書くことです。それによって、うわついている自分を意識し反省するのです。

僕自身も実践していることですが、日記を書き、自分を日々リセットすることを繰り返していると、しだいに平常とのブレ幅が小さくなってきます。そうなってこそ、はじめて人生で勝つことができると思うのです。

ワタミグループ・会長 渡邉美樹
1959年、神奈川県生まれ。県立希望ヶ丘高校卒。明治大学商学部卒業後、佐川急便のセールスドライバーなどを経て、84年渡美商事を設立して、社長に。2009年会長。11年から、岩手県陸前高田市の参与にも就任。
(構成=面澤淳市 撮影=宇佐美雅浩)
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