「働くこと」の意味が変わる

2つめの「ワーキッシュアクト」というのは、娯楽や趣味・コミュニティ参加のような本業の労働・仕事以外で、「誰かの困りごとや助けてほしいという需要に応えている」活動を指す。私たちは調査、研究を進めるなかで、本業以外で普段しているさまざまな活動が、楽しく豊かに持続的に提供され、じつは労働供給をしているという事実に注目した。

このようなワーキッシュアクトが「結果として誰かの労働需要を満たしている」性質があることは、自分のために楽しみながらでも担い手になれる潜在性を示唆し、未来の社会が豊かで持続的な社会となるための重要なパーツとなるだろう。

シニアも担い手としての役割を期待されるが、それは100歳まで現役のようにフルタイムで働くべしといった精神論的なものではなく、小さな活動で無理なく提供されていくことが期待される。さらには、労働需要を削減するという観点で業務のムダ縮減の根本的な議論も必要になる。

古屋星斗+リクルートワークス研究所『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)
古屋星斗+リクルートワークス研究所『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)

当然、提案する4つの解決策に限らない発想も存在するだろう。そのなかで4つの打ち手を提示したのは、これらの打ち手がすでに芽が出ているものだからだ。実践している企業、個人、地域がすでにある。課題の所在と打ち手が明確になっている。今、打てる手として、労働供給制約への解決策はこの4つの打ち手からはじめていこうという提案なのだ。

こうした活動が広がったあとに起こるのは、「労働」や「仕事」が今のイメージから大きく変容することだ。楽しく担い手になれ、社会の役に立てるのであれば、現在必ずしも楽しく満足がいくものとは言えないかもしれない「働くこと」も、また豊かな意味を持つことができる可能性は十分にある。

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