電力不足でも作りすぎてもブラックアウト

しかし、ここに見落としがちな問題点がある。太陽光発電は、日中しか発電できない。しかも悪天候の日は発電が無理だ。そのため、よく「昼間に充電すればいいじゃない」と質問される。

日本の蓄電技術は、まだまだ、余剰電力を全て充電できるまでにはいたっていない。リチウム電池は高価で品薄だ。理由は電池に欠かせないのがレアメタルで、その一番の供給元は戦争中のロシア。リチウム・コバルト・ニッケルは全て輸入に頼っている。そうなると蓄電池の技術革新を待つしかない。「昼間に充電」には程遠い。

送電線で送ることのできる電気の量にも限界があり、せっかく太陽光パネルで発電した電気も、作りすぎのときは、送電せずに調整命令で捨てるしかない。

では、送電容量を超えて電気を送ってしまったらどうなるか。ブラックアウト(全域停電)する。電力不足でもブラックアウトが起こるのだが、作りすぎでも送電網に負荷がかかり、同じ状況が起こる。これを回避するには、送電網を大容量電線や機器に変えなければならないのだが、インフラ整備には膨大な資金がいる。そもそも作りすぎの電気は、誰も使わない。いや、いまの日本の技術では、使いたくても使えないのだ。

暗い送電線と鉄塔
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再エネの頼みの綱は洋上風力発電

「風力発電をやれば良い」とも言われる。しかし、日本は風が欧州ほどは吹かない。頼みの綱は洋上風力発電だ。

秋田港沖と能代火力発電の沖につくられた秋田洋上風力発電は、今年1月から日本初の洋上風力の商用発電を開始した。私も実際に現地取材をしたが、海から突き出す風車の大きさと数は圧巻だった。秋田港に13基、能代港に20基の着床式洋上風力発電風車がつくられ、合計で約140メガワットの発電を行っている。

先日、岡垣啓司・秋田洋上風力発電社長が私の担当する「石川和男の危機のカナリア」(BSテレビ東京・毎週土曜日朝7時放送)に出演した。計画通り順調に発電ができていること、また洋上風力の可能性を力強く語った。

再生可能エネルギーの主力電源化への切り札として2020年12月に政府が示した「洋上風力産業ビジョン」では、2040年に洋上風力発電で約3000万〜4500万キロワットを発電するとしている。

ちなみに秋田洋上風力発電の発電量、140メガワット(=14万キロワット)は、一般家庭約13万世帯の消費電力に相当する。計画ビジョンの壮大さが、この数字からもわかるだろう。