化石燃料に依存する限り、日本の電気代は上がる

2022年度は化石燃料の大幅な高騰でこの「回避可能費用」が大幅に増えた。その費用は、前年比2.5倍にも膨れ上がった。この説明は前述の杉山大志氏のリポートとも一致する。

その結果として、再エネ賦課金で回収する費用が大きく減少し、その恩恵が表面化したということで、結局、高くなった化石燃料を燃やさないと日本では電力は作れないので(原発再稼働が進めば、ここは変化するが……)、その分、電気代は結局上がる。少しサービス値引きがあるにはあるが、値引きを電気代が上回るという結果は避けられない。

再エネは世界的な流れで、日本もカーボンニュートラルの実現を世界から求められている。買い取り制度は再エネ普及のためには、やめられない。FITやFIPの買い取り費用は増加していくことは確かだが、もし、再エネシフトが進めば、火力発電を圧縮することは可能だろう。

電力使用量が可視化された日本列島のイメージ
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複雑化したシステムを解決する「一体化案」

ここまで説明したように、電力値上げの真相は、複雑だ。さまざまな要因が絡み合い電力料金を押し上げている。ほかにも、燃料調達の難しさや火力発電と再エネのベストミックスの長期計画と見通しの見極めも難しい。安定電源の保守と構築の難しさ、法律の古い壁、業界のしがらみなどが、電力大手の会社経営を硬直化させ、改革を進まなくさせていると私は考える。

電気事業は莫大な資金と人材を必要とする、設備産業である。もし今後、従来型より小さく、高い発電力を生む太陽光パネルや風力発電が開発され、蓄電池を活用する小規模型の発電システムが全国に円滑に普及していけば、大型発電とともに地産地消の発電ができるようになる。そうすれば電力確保や電力値下げにつながることだろう。

送電網と電力会社の一体化も円滑な電力安定供給に資するはずだ。複雑なシステムを解消できるだけでなく、資金調達や発電と送電の計画を一体化でき、無駄な発電や調整がなくなる。

ついでに大手電力会社の一体化も考えてはどうだろうか。明治期につくられた都道府県の線引きや行政管轄が時代遅れになってきたように、日本に電力会社が生まれた時代から続く大手電力会社の境界をなくしてはどうか。東日本大震災以降、大手電力会社間の余剰電力の相互送電が行われているが、一体化すれば、電力が余った地域から足らない地域への送電がもっと迅速に進められるはずだ。住んでいる地域による電気料金の格差も解消する。

社会の大切なインフラである電力。そして値段の上昇。どうか毎月の電気代明細をじっくり眺め、その奥にある複雑な問題を見つめ直してほしい。

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