HRテクノロジーは働き方をどう変えるか

IoT、ビッグデータ、AI、ロボットといったテクノロジーの進化により、あらゆる産業において効率化や高付加価値化が起こりつつあります。「第4次産業革命」と呼ばれるこの動きは、従業員の働き方や企業における人材マネジメントにも変革を促します。

これまで人間が担ってきた単純作業などの付加価値の低い仕事は、AIやロボット等で代替できるようになり、人間は人間にしかできない、より付加価値の高い仕事を担うことが求められるようになります。こうした人材のシフトを支えるのが、「HRテクノロジー」(人的資源=Human Resourcesに適用するテクノロジー、以下HRテック)です。世界の先進企業は、従業員や組織の生産性を高め、さらには強い企業文化をつくるためにHRテックを活用しています。

HRテックにはさまざまなツールがありますが、図のように整理することができます。ピラミッドの一番上はタレント、すなわち人材です。個々の人材を、それぞれのスキルや経験など、さまざまなデータに基づいてマネジメントすることを「タレントマネジメント」と言います。

優秀な人材を企業が獲得・育成・活用していく

欧米企業ではタレントマネジメントはすでに当たり前に行われており、最近はさらに、組織やチームのパフォーマンスを最大化できるよう、マネジャーがメンバーの行動データを基にマネジメントする「パフォーマンスマネジメント」が注目を集めています。また、企業全体の文化を変えて従業員の「エンゲージメント」を高める取り組みも行われつつあります。従来、従業員サーベイは年に1~2回程度でしたが、テクノロジーの進化で頻繁にデータの収集・分析ができるようになり、より短いサイクルで改善することが可能になっています。

一番下は、企業全体を支えるシステム等のプラットフォームです。ここでは、人材に関するデータを分析し、そこから得られたアウトプットを経営や人事に活かす「ピープルアナリティクス」が行われています。欧米では、これらの取り組みをすべて行い、企業全体を変革する「トランスフォーメーション」を進める企業が多くなっています。

これまで人材マネジメントの領域では、人間という複雑な存在を扱うため、経験や勘に頼らざるをえない部分が多くありましたが、HRテックを活用することにより、判断の確実性が高まります。今後さらに研究が進めば、ハイパフォーマーに必要な資質・教育・経験なども明らかになるでしょう。そうした優秀な人材を企業が獲得・育成・活用していくうえで、HRテックは必要不可欠なツールと言えます。