「俺、迷いたいねん」

運という文脈でさんまさんの話をするならば、こんなこともありました。

以前僕は、さんまさんがご自分で現場まで運転する車にカーナビがついていないのに気づいて、聞いてみたことがあります。

写真=iStock.com/BraunS

「カーナビ、つけてないんですか」

「俺、迷いたいねん」

「?」

「お前、人生も一緒やで。そんなカーナビに指図されたとおりに行っても、おもろないやろ。現場まで行きたいのに行けない、どう行くねんって迷う。恋愛も一緒やで。人生も恋愛も俺、迷いたいねん」

でも、そんなさんまさんを見ていても、人生に迷っているようには見えません。

僕は、ここに真実があると思います。

計画に執着しすぎると、運は逃げてしまう

みんな迷うことで困っているけれど、ひとたび「むしろ迷いたい」と願った瞬間に、いろんな迷いが消えていく……。

人生、なにごとも予定通りにはいきません。たとえば、交際相手に求める条件を細かく設定して「こういう人じゃないとダメなの!」とかたくなに譲らない人ほど、結婚相手が見つからないのと同じで、もともとの計画に執着しすぎると、運は逃げてしまうのです。

迷っているから迷いが消える。

これも運を開くテクニックのひとつだと、僕は思います。

ただし、この話には後日談があります。さんまさん、かっこいいなと思ってたら、その半年後くらいに車を買い替えられまして。その車にはしっかりカーナビがついていました。しかも、僕にしてくれた「迷いたいねん」の話すら忘れていたという。それがまた、さんまさんっぽいんですが。

角田陽一郎(かくた・よういちろう)
バラエティプロデューサー
1970年、千葉県生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業。1994年、TBSテレビ入社。『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』『オトナの!』などの番組を担当。2016年にTBSテレビを退社し、独立。著書に『13の未来地図 フレームなき時代の羅針盤』(ぴあ)、『「好きなことだけやって生きていく」という提案』(アスコム)などがある。
(写真=iStock.com)
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