「ゆる起業」で、無理なく長続き

実際の起業には、株式会社、有限会社、NPО(特定非営利活動法人)団体などの方法がある。しかし、いずれにせよシニアの起業は、営業も経理も日々の雑務も全部1人でこなす、個人事業主による自営業に近いものが多い。

シニア世代の自営や起業を数多く支援する銀座セカンドライフ社長の片桐実央さんも、50代からの準備をすすめる。そして、片桐さんが提唱する方法が「ゆる起業」だ。20~30代の起業とは異なり、お金をたくさん稼いだり、株式の上場を目指すのではなく、シニア層のほとんどがやりがいを重視し、社会との接点や人生を楽しむことを起業理由に挙げているからだ。片桐さんは、次の「ゆる起業の5原則」を掲げる。

(1)本当にしたいと思えること
(2)やりがいを感じること
(3)経験を生かせること
(4)利益をあまり追求しないこと
(5)健康が一番であること

次に、具体的なビジネス内容を検討する段階で重要なのが、「好きなこと(やりたいこと)」「得意なこと(できること)」「お金になること(市場性)」という3つの分野に該当するものを書き出し、そのなかで重なり合うものを絞り込んでいく作業(図1参照)。「その領域で起業すれば、成功する確率が高まります」と片桐さんはいう。

さらに、SWOT分析(※)で事業の強みや弱みを分析し、具体的な事業計画書を作成する。これらの作業は3年ほどかけてじっくり行うことが大切で、「行ける」と判断したら、約3カ月を目安に具体的な起業準備を進める。

ゆる起業での開業資金はできるだけ少なくする。片桐さんが支援するシニア起業家の場合、平均100万~300万円が多く、日本政策金融公庫総合研究所の統計データもそれを裏付ける(図2参照)。

※事業の外部環境や内部環境を、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つのカテゴリーで要因分析するもの。