まずは参考人として招致を受け、それでも野党が納得しなければ、偽証罪に問われることもある証人喚問の証人として答弁すべきである。そこまでして初めて佐川氏が説明責任を果たしたことになる。その結果、佐川氏が安倍政権から更迭されたり、自ら国税庁長官を退いたりするというのなら、だれも文句はいえないだろう。

麻生氏は国民を甘く見ている

次に産経社説は「麻生太郎副総理兼財務相は29日の衆院予算委員会で、佐川氏が昨年7月の長官就任時に、恒例の記者会見をしなかったことは『適切な対応』だったと擁護した」と指摘する。

そのうえで「麻生氏は『国税庁の所管以外に関心が集まっていたから、(会見を)実施しないと決めたと聞いている』と述べた。抱負を語る文書を配ったから構わないという。これは納得できない」と主張する。

これもその通りである。東京社説ではないが、麻生氏は国民を甘く見ている。佐川氏を国税庁長官に任命したのは麻生氏だったはず。麻生氏には任命責任がある。

半年前に批判したのは朝日だけだった

ところで昨年7月15日のプレジデントオンラインで、「国税長官の“論功行賞”許す大新聞の倫理」との見出しを付けこう書いた。

「これこそ官邸政治の弊害ではないか。そう指摘しても過言ではない事態が起きている。政府が7月4日に公表した国税庁の長官人事のことである」
「国会で森友学園問題を追及する野党の質問に対し、繰り返し答弁に立ち、調査を拒否し続けた財務省の官僚を国税庁長官に据えた。『安倍政権を守った論功行賞だ』との非難の声が上がり、全国紙では朝日新聞だけが社説で厳しく批判した」

実際、あのときは全国紙では朝日新聞だけが社説に取り上げた。しかし今回は東京新聞と産経新聞が社説のテーマにしている。

東京と産経は最左翼と最右翼といわれるほど、ともに両極端な面を持つ新聞である。その2紙が取り上げ、同様な主張を展開しているのだから、国税庁長官問題は日本の社会にとって間違いなく大きい問題である。

今後も各新聞が社説のテーマとして扱うだろう。沙鴎一歩はそれを楽しみにしている。なぜなら関係者がその社説を読んで、国税庁が真に国民のための組織になってくれることを望んでいるからだ。

(写真=時事通信フォト)
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