佐川宣寿・国税庁長官のかつての国会答弁が虚偽だったことがわかった。このことについて東京新聞と産経新聞がともに社説で批判している。2紙の意見が共通するほど佐川氏の対応はひどい。佐川氏は長官昇格以来、一度も記者会見を開いていない。こんな人間をトップにおいたままで、納税者の理解を得られるのか――。
2017年2月、衆院予算委員会で答弁する財務省の佐川宣寿理財局長(左、当時)。右端は安倍晋三首相(写真=時事通信)

だれが見ても、佐川氏の答弁は虚偽そのもの

今月16日から全国の税務署で確定申告が始まるが、今年はかなり混乱しそうだ。

学校法人・森友学園への国有地売却問題で、国会で連日のように佐川宣寿(のぶひさ)・国税庁長官の問題が取り上げられているからだ。財務省理財局長当時の佐川氏の国会答弁が、事実と食い違うことが次々と発覚した。納税者も、国税のトップがあのありさまではとても納税に協力する気にはならないだろう。

だれが見ても、佐川氏の国会答弁は虚偽以外の何ものでもない。

国税といえば、ロッキー事件やリクルート事件、それに金丸信自民党元副総裁の巨額脱税事件など大型経済事件を東京地検とともに捜査(国税当局は調査)して立件してきた官庁である。そのトップがこんな体たらくではどうしようもない。

新聞社説も1月27日付で東京新聞がテーマに取り上げ、続いて産経新聞も31日付で取り上げた。これから確定申告が近づくにつれ、他の新聞も社説で書いてくるだろう。

「検討資料」であり「交渉記録」ではないという詭弁

東京新聞はまずリードでこう指摘する。

「確定申告の時期を迎えるが、これで徴税業務に信頼を得られると思っているのか。佐川宣寿・国税庁長官のかつての国会答弁が虚偽に近いことが分かった。納税者を甘く見ているのではないか」

見出しも「納税者を甘く見るな」である。

本文で東京社説は「財務省近畿財務局が内部での検討を記録した文書を、情報公開請求していた大学教授に開示した」と書き出し、「文書は財務局の売却担当者から法務担当者への質問を書いた『照会票』と、回答をまとめた『相談記録』で2015、16年度分の計74枚」と説明する。

そのうえで東京社説はこう訴える。

「財務局側は『内部の検討資料であり、交渉記録ではない』と説明。交渉のやりとり自体を記録したものではないから、交渉の記録ではない―といった詭弁を弄している」

財務省が、開示された交渉の経緯を示す書類を「検討資料」であり、「交渉記録」ではないと強調するというのだ。東京社説が指摘するように詭弁そのものである。