さらに、米国の17年8月の失業率は4.4%と、かなり低い水準です。この数値は先進国としては非常に低く、ある意味、働きたい人はすべて雇用されている完全雇用とも言える水準ですので、DACAが撤廃された場合、労働力不足が加速する事態も想定されます。この意味からもとても大きな問題と言えます。

「ドリーマー」である社員を特定できない

日本企業を始め米国に進出している企業にとっては「ドリーマー」が一斉に離職した場合、事業継続、ノウハウの継承等のリスクがあります。にもかからず、対応が難しいのは、米国労働法に詳しい弁護士の多くが、雇用主が従業員の雇用時もしくは雇用後、その者が「ドリーマー」であるかを質問(確認)することはできないとしており、社員が申告しない限り雇用主は「ドリーマー」である社員を特定できないからです。

そのため、平時より一部社員がまとまった形で離職することを想定したリスク管理が求められます。例えば、「ドリーマー」が一斉に離職することが分かった際には、引き継ぎ等が適時、適切に行われる仕組み(業務手順書の作成、特定の社員に知見が集中しすぎないためのノウハウ共有の仕組み等)を整備しておくことが必要となります。

また、「ドリーマー」の離職に伴うリクルート活動費、新規雇用費、また後任者トレーニングなどにかかる費用を試算し、財務に与える影響を推計しておくことも重要です。ただし、前にも述べた通り、米国の失業率は4.4%程度であり、一斉離職した際の後任の採用は極めて困難であることは覚悟するべきです。当然ながらDACAが撤廃された場合を考慮し、「ドリーマー」の離職手続き等に関し、いつまでに何をすべきか、という具体的な実行計画を策定することも必要となります。