助成金や補助金は、お金に困っていない人や企業も申請できる。それを受け取るかどうかで、10年後には大きな差がつくのだ。

「よく調べたら、研修費や調査費がもらえた」

2020年に向けての景気回復が巷間ささやかれているのとは裏腹に、2016年一年間をとってみても、足元の実質的な景気は大幅に回復したとは言い難い現実を、読者の皆さんも感じているだろうか。実際に我々の個人富裕層顧客には中小企業オーナーが多いこともあり、昨年はよく「今、中小企業はかなりつらいぜ~」というボヤキをよく聞いた。筆者の感覚で言えば、戦後日本を実質的に高成長に導いた「長期金融(借りたお金を長期間で返済するの仕組み)が中小企業にまで広く行き渡るようにならないと日本経済の先行きはとても不安に満ちたものだと言わざるを得ない。

しかしながら一方で、「よく調べてさ、今までかかっていた社員研修費や調査費が助成金でカバーできたんだよね」という、中小企業オーナーからみれば一石二鳥のやり方で、厳しい時代を乗り切ろうとしている方々もいる。実はこの助成金、あるいは補助金という名の「税金の配分」の一部は、多少の条件はあるものの本来は通常どの会社でも活用検討できるものなのだ。その中でも特に富裕層が経営する会社は、助成金や補助金の関係情報に明るい。それはなぜか。ズバリ行政に対する意識が高いことがその理由のひとつだ。要するに個人にせよ、法人にせよ、納税意識が高い、ということを意味する。

昨年は俗に言うパナマ文書を皮切りに、富裕層の節税の方法論が大いにクローズアップされた年でもあったが、一方で配分されるものに対する眼力もそれなりのものなのだ。とにかくよく気が付く、あるいは、前号で述べた通り彼らの官房長官役(前回記事http://president.jp/articles/-/20894 参照)が気付いてしまう、という構造だ。

200万円の助成金は2000万円の売上げに相当する

もう少し深堀りしてみよう。Aという会社が社員研修や調査にかかる「はずだった」費用の助成金を申請し、年間200万円を節約した(節約、というよりは、この場合はたとえば、助成金により営業損失がマイナス200万円からゼロになった、と大まかに考えることができる)と仮定してみる。仮に平均営業利益率を10%とすると、助成金申請によって、2000万円の売上げに相当する営業利益の損失分を防げる結果となる。

しかもこれは「社会的な枠組み=法律」をよく見て利用しているだけの話だ。そして驚くなかれ、これらの助成金や補助金はほとんどすべてオープン情報なのである。前述の例は、厚生労働省がキャリアアップ助成金と名付けているもので、まさにオープン情報なのである。ここに気付いて淡々と助成金申請し、その資金で社員のスキルアップや、事業上の意思決定ファクターの一部となる調査費用が軽減できる、ということだ。10年たてば、これを知っている人の会社と知っていない人の会社で、それはそれは恐ろしい差が生じるのは、経営者でなくともおわかりいただけるだろう。たった数百万円、されど数百万円で、積もり積もれば決定的な差に結び付くことになるのだ。