「今日は官房長官いる?」

人脈ほど頼りになるものはない、と考えるビジネスマンは多いはずだ。これから忘年会や新年会、賀詞交換会などで人脈作りに励む人も多いだろう。それを否定はしない。かくいう私も、電通勤務時代からセブンシーズ社長時代の人脈がなければ、今日このような富裕層ビジネスをやっているとは思わないからだ。

しかしながら「人脈を頼りにするビジネスほど頼りにならないものはない、という考え方も一方で正しい」という意見をどう思うだろうか。私の場合、「むしろ情報も人脈も量より質なのではないだろうか」と、会社の経営を始めたあたりから強く意識するようになった。

それが確信に変わった転換点がある。泣く子も黙る、あるお金持ちが当社を訪問した際の一言だ。「今日は官房長官いる? いないんだ。じゃあね」。帰社後スタッフに話を聞いた私は「大袈裟だなあ」と思ったものの、幸か不幸か官房長官役に指名されていることを知って少し嬉しさを感じたものだ。

人脈の広さが「邪魔」になる

現在の日本政府は安倍総理大臣に菅官房長官というコンビネーションになっている。官房長官は、首相のスポークスマンであると同時に相談役であり政策秘書であり、その役割は想像を絶するものがある。首相は官房長官には他の政治家に話さないことも話すというからさしずめプロ野球の投手と捕手のような関係だと言える。

重要なことは、「官房長官にしか話さないことがある」、という点だ。ご存じの通り安倍首相には官房長官は菅さん1人しかいない。誰でも知っていることだが、首相は広範な人脈を持っていても、特に重要な話は官房長官にしかしない、という事実に注目したい。情報漏えいが許されないものに関しては、人脈の広さが邪魔になるケースがしばしばあるのだ。

アメリカでは日本の官房長官にあたる役職は国務長官(Secretary of States)と呼ばれる。日本語に直訳すると「国の秘書」。ただごとでないのがよくわかるだろう。