お金持ちが注目する「サンムツ」「サンヤツ」とは

「サンムツ」とか「サンヤツ」とか言われる広告スペースがある。新聞の一面の最下部に、6つか8つに分かれて小さい広告が掲載されている、まさにあれのこと。専門誌の広告が多く、すくなくとも私が電通勤務時代の広告業界では、特に目立つような広告スペースとは言われていなかった記憶がある。

しかしながら、当社の富裕層調査では、「特にこのスペースが情報源として役に立っている」という意見が多いのだ。意外かもしれないが、これらの目立たないスペースが定期的な情報源として富裕層に広く受け入れられていることは、当社データから判明した事実のひとつだ。

無駄がない専門的な情報には価値がある

そもそも、富裕層に対しては「広告は効かない」という都市伝説のような話がある。長く富裕層マーケティングに携わってきている当社からしても、そのような面があることは否定しない。少なくとも一般消費者に比べればそうなのだろう。

にもかかわらず、なぜ富裕層はこの小さな広告スペースには注目するのか? それは、これは広告なのだが、広告に見えない(ほど、一般的な広告と比較すると小さい)からだ。富裕層にとって、複雑で雑多だと感じさせる一般的な広告は、時間の無駄と映る。ごちゃごちゃしたことは官房長官に任せればよいのだ(富裕層の行動パターン1:http://president.jp/articles/-/20894)。

「サンムツ」や「サンヤツ」の特徴は、小さいというだけではない。読者の皆様も、1か月ほど注視していればお気づきになることと思うが、このスペースに掲載されている広告には、ある種の規則性がある。それは「一般的にはあまり注目されない産業分野の専門誌」換言すれば「読者がそれほどいないと推察される専門誌」の「特集タイトル」が、広告として「月に1回くらいのペースで掲載されている」という規則性だ。つまり、この欄に定期的に目を通せば、各専門分野で注目されている話題が確実に手に入るということだ。

富裕層は、このように一点に絞った話題であれば、時間の無駄が少なく、自分の事業なり人生の悩みの解決なりに結び付く可能性があることを、直感的に知っているのだ。逆に言えば、このような「限られたスペース」は富裕層マーケティングの本質そのものでもある。