人件費率を管理する

――田中社長は元金融マンでもいらっしゃるので、ぜひ伺いたいのですが。KPIというか、今後の成長に向けた具体的な管理指標は何か設定されていますか。
整理整頓の行き届いた圃場で収穫作業が進む。

【田中】はい、設定しています。サラダボウルが行う農業経営は、古いハウスが点在する昔ながらの環境のもと、気象にも左右されながら、それぞれの場所で異なる条件で野菜を育てていくスタイルです。そこでのKPIと、施設栽培を行う関係会社であるアグリビジョン(太陽光だけを利用する国内最大級の太陽光利用型施設)や兵庫ネクストファーム(国の支援事業として建てられた大規模園芸施設)では、当然ですがKPIは異なります。

サラダボウルの場合、栽培品目ごとの人件費をKPIに定めています。それが過去12年間一度も赤字を出すことなくやってこれた理由だと思います。まぁ、格好よく言えばそうですが、結局は給料が安いから黒字だというだけの話で、従業員には本当に申し訳ないです。

――直球なお答えをありがとうございます。

【田中】ただ、それは皆もわかっています。払いたい気持ちがあっても、払えないからしょうがない。自分たちの給料は自分たちで上げていくしかない。だから人件費にもっと注目してやっていこうよ、ということです。

人件費は、売上の35%から40%が目標です。考え方としては、売上は「単価×収量」で決まります。僕らの農作物は固定価格なので、売上を上げるには、収量を上げる必要がある。収量を上げるには、秀品率(全体収量の中で良品が占める割合)と作付面積を増やしていくことになる。それをどのくらいの人で管理するか、ということです。逆にそこをきちんと管理しておけば、計画的な生産ができるのが僕らのスタイルの特徴でもあるんです。

――アグリビジョンや兵庫ネクストファームといった関連会社では、また別のKPIがあるわけですね。

【田中】そうです。施設栽培の場合に大事なことは、戦略性の高さと、その戦略を実行できるかという部分。それによってKPIも変わってきます。

(後編に続く)

有限責任監査法人トーマツ
有限責任監査法人トーマツは、日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッドのメンバーファームの一員である。監査、マネジメントコンサルティング、株式公開支援等を提供する、日本で最大級の会計事務所のひとつ。
農林水産業ビジネス推進室
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(大和田悠一(有限責任監査法人トーマツ)=聞き手 前田はるみ=文・構成 尾崎三朗=撮影)
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