2016年3月26日(土)

なぜボルボとマツダはクリーンディーゼルを開発できたのか

マツダ絶好調の秘密はここにある!【番外編】

PRESIDENT Online スペシャル /PRESIDENT BOOKS

著者
宮本 喜一 
ジャーナリスト

1948年奈良市生まれ。71年一橋大学社会学部卒業、74年同経済学部卒業。同年ソニー株式会社に入社し、おもに広報、マーケティングを担当。94年マイクロソフト株式会社に入社、マーケティングを担当。98年独立して執筆活動をはじめ、現在に至る。主な著書に『マツダはなぜ、よみがえったのか?』(日経BP社)、『本田宗一郎と遊園地』(ワック)や、翻訳書『ジャック・ウェルチわが経営(上・下)』(日本経済新聞出版社)、『ドラッカーの講義』(アチーブメント出版)、『勇気ある人々』(英治出版)などほか多数。

執筆記事一覧

ジャーナリスト 宮本喜一=文
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ディーゼルをガソリンエンジンと同時開発

最近注目度が増しているクリーンディーゼル乗用車。国産メーカーではこの2、3年、マツダが気を吐いている。輸入車ではドイツブランドの存在感の高い状態が続いている。しかしここに競争力のあるモデルを国内市場に投入して攻勢をかけているブランドがある。ボルボだ。

新開発ディーゼルエンジを積んだV40 D4。

昨年2015年7月23日、ボルボはその主力5モデル同時にクリーンディーゼルエンジン仕様車を投入した。新エンジンを主力モデルに一気に搭載して発売するという手法は、あまり例がなく、それだけにボルボの新しいディーゼルエンジンにかける意気込みが伝わってくる。7月の発売から15年の年末までのほぼ5カ月間で販売した台数は3489。これとほぼ同じ時期での販売総数が6188台であるから、半分以上をクリーンディーゼル仕様車が占めたことになる。この時期の15年9月にフォルクスワーゲンのディーゼルエンジン排気ガス規制における不正が明らかになるという逆風があったことを考えると、決して小さくはない数字だ。

従来、ボルボの自動車の安全技術にこだわる姿勢には定評があり、現在も、「2020年までに新しいボルボ車において交通事故による死亡・重傷者をゼロにする」(ビジョン2020)を同社の目標として掲げている。この目標に加え、今度は先端技術にもこだわる姿勢を見せ、自動車の心臓部であるエンジンそのものを自社開発し、ガソリンとディーゼル両方のエンジンをつくりあげた。これには少なからず驚かされた。というのも、同社の事業規模はそれほど大きいものではなく、2015年の同社世界総販売台数は、1927年に自動車の製造を開始して以来初めて50万台を越えた(正確には50万3127台)程度だ。大手の自動車企業と違って、こうした小規模な生産にとどまっているメーカーにとっては、多額の開発資金をつぎ込んでガソリンとディーゼル両方のエンジンを自社開発するのは、決して負担の軽い話ではない。

ところが、そんなボルボが、今回のディーゼルエンジンをガソリンエンジンと同時に自社開発した、という。

興味深いことに、このボルボと、冒頭にあげたマツダの両社はともに、かつて2000年前後の数年間、同じフォードグループの一員だった。ボルボがフォードグループに加わったのは1999年。当時フォード傘下には8種のブランドがあり、同グループの世界戦略にしたがって各社がその個性・商品特性を活かすための自社ブランドの定義をすり合わせたうえで、乗用車開発の現場で協業し規模の経済を最大限に活かそうとしていた。ちなみに、当時ブランドの定義によるボルボ個性は、豊かな感性(Expressive)、こだわり(Dedicated)、安全(safe)だった。同社はマツダとCセグメントの乗用車開発で協業する。そしてボルボはその協業の成果として4ドアセダンのS40とワゴンのV50をつくりあげた(マツダはアクセラ、海外名マツダ3)。

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