もう1つは、中小企業へのBCP(事業継続計画)策定の推進だ。災害が発生したときに、企業が従業員や得意先、お客様に対してどのようなアクションを取るのか。また、事業を早期に復旧するには、どのようなフローを経ればよいか、計画を用意しておくべきだ。

大企業では策定が進んでいるが、中小企業では取り組みが遅れている。ある中小企業の社長に「うちなんか、BCPなんて関係ない」と言われたこともあるが、会社を守るためにまずは策定することが肝要だ。何もなければ災害が発生したときの対応も自ずと遅れる。損保各社も事業継続を補償する保険を用意するなど、提案を促進したい。

──東日本大震災から4年あまり。震災を教訓に、損保業界としてどのような取り組みを進めるか。

地震保険の普及に力を入れたい。東日本大震災の発生直後は、加入者が全国で飛躍的に伸長したが、ここ数年は年を経るごとに契約伸長率が鈍化している。業界をあげて、地震保険の加入率を高めていかなければならない。

2013年末の世帯加入率は全国で27.9%。県別では宮城の50%がトップだったが、長崎や沖縄などは13%台にとどまっている。今後は重点地域を絞って広報活動や推進活動を展開していく。最終的には世帯加入率100%を目指したい。

日本損害保険協会会長
鈴木久仁
(すずき・ひさひと)
1950年、神奈川県生まれ。73年早稲田大学商学部卒業後、大東京火災海上保険(現あいおいニッセイ同和損害保険)入社。2000年執行役員、04年専務、10年より社長。14年からMS&ADホールディングス会長を兼務。15年6月より日本損害保険協会会長に就任。
(プレジデント編集部=構成 市来朋久=撮影)
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