小学生と高齢者の防災意識を高めたい

今年6月に日本損害保険協会の会長に就任した鈴木久仁氏(MS&ADホールディングス会長兼あいおいニッセイ同和損害保険社長)。損保業界が直面している課題と対策について聞いた。

──口永良部島や箱根大涌谷での噴火など自然災害への意識が高まっている。

個人が一人ひとりで防災意識を高めることが大切だと思っている。日本は火山の上に成り立つ災害大国。地震をはじめとして津波、台風、水害といった大規模な自然災害に加え、近年は局地的に発生する竜巻や大雪、爆弾低気圧、土石流などの被害も発生している。いつでも、だれもが被災する可能性があるという認識を持ち、万が一被災した際にどのように対応をするのかを考えておく必要がある。

日本損害保険協会会長 鈴木久仁氏

損保協会としては今後起こる可能性の高い災害を、行政の防災計画と連携してエリアごとに周知していきたいと考えている。

──防災意識を高めるために、損保協会ではどのような取り組みを行うか。

1つ目は「ぼうさい体験隊」への参加者の拡大だ。損保協会では10年以上前から小学生を対象に、防災教育プログラムを実施してきた。災害の危険箇所を現地の小学生と協会員が共に歩き、起こったときの対処法を知らせていく。たとえば、この交差点は交通量が多いので通学ルートを変えようとか、大雨が降ってこの川が氾濫したらどこに逃げるかなど、ワークショップ形式で考える。

「ぼうさい体験隊」で学んだことをもとに地域の防災マップを作成し、これを全国単位で表彰するコンクールも開催している。これまでの応募件数は約2000件、約500の小学校から参加があった。自ら考え、動き、つくっていく取り組みが評価されて、国連防災世界会議でも取り上げられるなど、一定の成果を挙げてきた。ただ、全国に小学校が約2万校あることを考えると、参加数はまだまだ拡大できる。

現在、このプログラムの対象は小学生のみ。将来的には、高齢者を対象にした同様のプログラムも展開したいと考えている。小学生と高齢者が一緒に参加する形も考えられる。地域住民と一体になって災害に対しての理解度を高め、防災、減災につなげていきたい。