航空宇宙の集積地「東海三県」の挑戦

とにかく今は、民間進出を果たすためのビジネスを“勉強”している最中だが、「この飛行機は民間進出の大きなチャンス。自衛隊向けゆえ装備品や部品の国産比率も高い。優秀な国内メーカーといっしょに海外進出を果たすというのも、我々の夢なんです」(大垣氏)

三菱と川崎のチャレンジは、かつて米英独ソに次ぐ世界第5位の航空機大国でありながら、戦後は他国に組み敷かれる立場に甘んじてきた状況から脱却し、日本の宇宙航空産業が、本当の意味で再出発を果たすことにつながる。日本一の宇宙航空分野の集積地であることを自負する東海三県の行政サイドも、その後押しを目指している。

今日、愛知、岐阜、三重の三県は国際戦略総合特区「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」の指定を受けている。交通行政通を自任する愛知県知事の大村秀章氏は、ボーイングの拠点アメリカのシアトル、エアバスの拠点フランスのトゥールーズに並ぶ航空機の本場に育てたいと意気込む。今後も当分、ボーイング、エアバスなど世界大手向けの機体パーツ製造などが中心とならざるをえないが、「遠い将来かもしれないが、東海の航空機産業が世界の主役になれる日が来てほしい。今はその未来像に向かって、足を一歩踏みだそうとしている段階で、行政側としてもできるだけのことはしたい」と、愛知県関係者は言う。

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愛知・岐阜にまたがる「国際戦略総合特区」

「東海三県は終戦までは飛行機づくりが盛んだったこともあって、GHQ(連合国軍総司令部)による飛行機開発の禁止が解けたときも、人材が集まりやすく、再び航空機産業の集積地になった。中京には滑走路に隣接している工場が小牧と各務原の2カ所あり、組み立てた飛行機を飛ばす施設を一からつくらなくていい。歴史の面でも地の利でも、中京が日本の航空機の中心地になるのは必然」(三菱航空機関係者)

生みの苦しみを味わい、これからも決して平坦とは言えないであろう、自立への道を歩み始めた日本の宇宙航空産業。戦後70年に近づきつつある今、空への夢を再び引き寄せることができるのだろうか。

(時事通信フォト=写真)
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