M&Aのシナジーを最大化するためには、統合後のマネジメント戦略におけるスピード感も重要です。このスピード感においても、リバーサイドの手法には学ぶべきところがあります。

リバーサイドでは「100日プラン」というPMIのノウハウを使い、経営統合のシナジーを追求しています。ここにはPMIのためのポイントが網羅されており、一般の事業会社がM&Aを行った場合にもそのまま応用できるものとなっています。

「100日プラン」はなぜ、100日なのか

興味深いのは、リバーサイドがこのプランを、「3カ月プラン」と呼ばずに、「100日プラン」と呼んでいる点です。印象として、「3カ月プラン」では、「1カ月」がひと区切りとなり、それを3回繰り返すイメージになります。

しかし、「100日プラン」であれば、目標の実現までに極端にいえば100段階のステップを設定できます。つまり、今日の段階を踏まえて、明日は次の段階というように、細かく進捗を確認しながら進むことが可能になります。

また、「200日プラン」でも「300日プラン」でもなく、「100日」とすることにも意味があります。300日の計画となると、ゴールは1年近くも先となります。しかし、100日であればゴールが見えやすく、目標を達成したときのイメージもつかみやすいというわけです。

図を拡大
リバーサイド「100日プラン」の7項目

現実にはPMIには200日、300日かかる内容もありますが、そういうものに引っ張られて全体の進捗が間延びすることは避けなければなりません。

「100日プラン」がなぜ、100日なのかは、現場をよく知る経営者や、自分で事業やプロジェクトを回したことのあるリーダーであれば、感覚的に理解できるかもしれません。

このあたりは、「100日プラン」にあげられている「戦略計画の策定」と「事業計画・月次事業計画の確認・見通し」とも、密接に関連してくる部分です。いまは決算も、四半期で見る時代ですが、90日~100日の単位で大きなリズムをつくっていくことで、年間で「4つのリズム」ができ、プロセスと進捗のイメージをつかみやすくなります。

リズム感で進捗のイメージをつかんだら、次にKPI(重要業績評価指標 Key Performance Indicators)についても検討します。このKPIについては、私自身の経験からも、その重要性を実感しているところです。
次回は、当社の例を交えつつ、KPIによるプロセス管理についてご紹介しましょう。

※『M&Aを成功に導くPMI』事例に学ぶ経営統合のマネジメント(プレジデント社刊)より

株式会社日本M&Aセンター 代表取締役社長 三宅 卓(みやけ・すぐる)
1952年神戸市生まれ。日本オリベッティを経て、1991 年に株式会社日本M&Aセンターの設立に参画。数百件のM&A成約に関わり、陣頭指揮を執った経験から、「中小企業M&Aのノウハウ」を確立し、品質向上と効率化を実現。同社において営業本部を牽引し、2006年のマザーズ上場、2007年の東証一部上場に貢献した。中堅・中小企業のM&A実務における草分け的存在であり、テレビ東京系「カンブリア宮殿」「WBS(ワールドビジネスサテライト)」をはじめとするメディアで活躍するほか、経験に基づくM&Aセミナーは毎回好評を博している。2008年より現職。主著に『会社の買い方教えます。』『会社・社員・お客様 みんなを幸せにするM&A』(ともに、あさ出版)、『会社が生まれ変わるために必要なこと~M&A「成功」と「幸せ」の条件』(経済界)など。「ポストM&A」に関する著書は本書が初となる。
【関連記事】
落ち目な会社を買収するタイミング。利用者が減る前に買うか、価格が下がるのを待つか
検証「合併人事」お金、ポスト、仕事はどうなる?
M&Aを成功させる「ミニ新社」のつくり方
フランス人COO誕生へ! 武田薬品工業の大胆人事は成功するか