「これは日本経済を一段発展させる」

その直後、ボーダフォン販売代理店との会合で孫社長は「10年以内にNTTドコモさんを抜きます」と発言している。周囲が孫社長一流の大風呂敷ととらえるなかで、嶋氏は違った。この思いを、自分の覚悟として受け止め、日記にこう記したという。

「NTTのような国営から出発した企業ではなく、純粋な民間企業がナンバーワンになる。これは日本経済を一段発展させることになる」

この買収がソフトバンクのジャンピングボードになったことは間違いない。当初から日本の高い携帯電話料金を下げるといっていた孫社長は、価格破壊的な通話・メール料金を打ち出した。しかも、そのCMでは犬のお父さんを登場させるといった奇抜な発想で高い好感度を得ている。そして08年、アップルから得た日本市場における「iPhone」の独占販売権によって、モバイルインターネットの市場を切り拓いていく。

その後も嶋氏は、15年までに光ファイバーを中心とした超高速ブロードバンド「光の道」で政府との折衝を担った。さらに、記憶に新しいところでは、東日本大震災後の被災地訪問に随行。そこからスタートした太陽光発電への取り組みでも、再生エネルギー特別措置法の立法に奔走する。嶋氏は「自分自身の正史」と、この本を位置づけているが、それはまさに怒涛の8年史である。

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