ボランティアガイドは「民間アンバサダー」

【三宅】ゲストとガイドの組み合わせはどのように決まるのでしょうか。

【川本】TFGのサイトにゲストが登録したリクエストを見て、ガイド自らが「私がやります」と手を挙げる仕組みです。来日するまでに何度かメールのやり取りをするので、その間に信頼関係が生まれます。会ったときはもう旧知の友達のような感覚になるのです。

【三宅】熱意ある人だけが、ガイドを務めているということですか。

【川本】そうです。実際に活動していただける人を求めています。「試験合格後、1カ月以内に1回目のガイドを、また年間最低6回以上のガイドをしてください。そうしなければ、翌年の登録は見送らせていただく」と伝えています。

【三宅】ガイドは重責を担う「民間アンバサダー(大使)」です。語学力だけではないということはわかりますが、とはいえ、たとえば英語の能力はどのくらいのレベルが必要でしょうか。

【川本】Eメールを読めて書けなければいけません。これは意志の疎通ができる、という意味です。会話はコミュニケーションが取れれば、流暢でなくても構いません。大事なのは、相手が望んでいることをくみ、それに応えてあげる、という姿勢ですから。

【三宅】日本の文化や歴史などの専門知識は必要ですか。

【川本】ガイドをしながら学んでいけばいい、と考えています。私たちは、プロのガイドではなく、ボランティアのガイドです。わからないことがあったら、聞いたり調べたりすればいい。たとえば、お寺や神社に説明してもらいそれを通訳したり、立札などを読んで訳してあげたりするのもいいでしょう。後からメールで回答するというのも悪くないと思います。

【三宅】TFGとイーオンが提携して、この4月から「ボランティア通訳ガイド養成講座」を始めます。私どもイーオンは、「学んだ英語で人の役に立ちたい」と考える人たちにとって、ボランティア通訳ガイドは最適なものであると考えています。講座は、外国人ゲストとのちょっとした会話(スモールトーク)や、外国人ゲストからよく受ける質問に対するユーモアを交えた応え方などを学ぶ実践的なプログラムが用意されています。

【川本】養成講座は「民間アンバサダー」としての心構えをしっかり学んでいただける最良の機会だと思います。

【三宅】講座の人気はすごいですよ。申し込みは受付からわずか9日で、すでに定員(150人)に達しています。

【川本】頑張りたいですね。

【三宅】今後、どのように活動を展開したいとお考えですか。

【川本】できるだけ多くのゲストのリクエストに応えていきたいと思っています。リクエストの数は急増していて、すべてに対応できていないのが現状です。ただ、ガイドを増やしたいとは思いますが、「『自分の語学力の向上』を主目的にしない」ということを理解していただける人に、登録してもらいたいのです。TFGでガイドをすれば語学力を高められますが、外国人旅行者を「自分の練習台」にしてほしくないのです。「自分のため」ではなく「ゲストのため」に活動できる人を必要としています。

【三宅】本日はありがとうございました。

(構成=金澤匠 撮影=澁谷高晴)
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