Case1.新商品を提案する
自分の頭のなかを整理したうえで商談に臨もう。カギは「ピラミッドストラクチャー」の活用だ。

まず、なぜ買ってほしいのかを伝えよう

「新商品を開発したので、ぜひ話を聞いてほしい」と依頼され、忙しい合間を縫って時間をつくった。すると、50ページはあろうかという自分の会社の説明資料を机の上に置いて延々と話し始め、肝心な新商品の話は30分経っても一向に始まらない。ようやく最後に画期的で魅力的な新商品であることがわかっても、買う気が湧いてこなくなった。そんな経験はないだろうか。

「商談では相手に何をしてほしいのかを事前によく考え、それを冒頭で伝えることがとても重要です。新商品を買ってもらうのでも、なぜ買ってほしいと思うのか、その理由を明確にすることで相手に強力なインパクトを与えることができるようになります。要は上司が部下からの報告で最初に結論を求めるのと同じことなのです」と田中さんはいう。

しかし、自分の頭のなかを整理するのは意外と大変で、慣れないとなかなかできないもの。そこで田中さんがお勧めするのが「ピラミッドストラクチャー」と呼ばれる思考法だ。ピラミッドの頂点のところの三角形が「何をしてほしいのか」という目的の部分。そして、残る下の台形部分が「どうしてそう思うのか」という理由の部分で、「性能がアップする」「付加価値がつく」「省力化につながる」といったことが台形部分の3つに切り分けた三角形を構成する。

田中さんの場合、商談の時間として1時間もらえたとしたら、最初の5~10分でその目的と理由を伝え、その後は商談相手とのコミュニケーションのキャッチボールに費やすようにしている。「一方的に話しすぎる営業マンは相手から嫌われることが多いのです」と田中さんは一言注意する。

そのキャッチボールのなかで相手からよく投げられてくるのが、「できない」「したくない」「するべきではない」という不安や懸念。そうしたら、今度はそれらを解決、払拭できる方法を投げ返し、商談成立という当初の目的の達成に近づけていく。このキャッチボールで、当初想定していなかった相手の新たなニーズが見つかることも往々にしてある。