マッキンゼー流プレゼンの極意とは

一方で「有名企業の経営者が目の前にずらりと並んだプレゼンで緊張してしまい、自分が何をいっているのかわからなくなった経験があります」と語るのは、世界的なコンサルティング会社であるマッキンゼーで史上最年少のマネジャーとなった田中裕輔さん。現在、田中さんは訪問者数で国内3位(2012年7月)を誇る靴のECサイト「ロコンド」の代表取締役を務め、経営者として日々多くの商談に臨んでいる。

その田中さんはマッキンゼー時代に行った数々のプレゼンテーションを通して、どうしたら相手にインパクトを与え、提案したプランに賛同してもらえるか、そして自分の成果につなげていけるかを考え抜いてきた。田中さんの手法にはコンサルティング会社ならではの一流の思考法やネゴシエーションの技術が活かされ、さまざまなビジネスシーンでの応用も可能だ。

プレゼンの場合はアイコンタクトや身振りも重要である。クリエイティブ・ディレクターでプレゼンの達人でもある1st Avenue代表のマンジョット・ベディさんは、独自のアイコンタクトの手法などを駆使しながら国内外の経営者の心を鷲掴みにしてきた。

そんな彼らにかかると、顧客からのクレーム対応も自社のファンづくりに変わってしまう。「そうですね、私も○○さんと同じように腹が立ってきました」と最初に一言伝えるだけで、相手は「この人は自分のことを理解してくれている」と思う。さらに相手のいうことを復唱して伝えることで、その思いはさらに強まり、相思相愛の関係が構築される。

クレームをつけてきた相手は「こうしてほしい」という気持ちがあるから、連絡をしてきたわけだ。その潜在意識を引き出す話し方が大切なのだ。そうやって相手の主張を肯定した会話を交わすうちに、自社の問題解決につながる有益なヒントを発見することも少なくないそうだ。

次項から彼ら達人たちのさらなる巧みな話術を紹介しよう。