吉野さんも田中さんと同じようなことを指摘する。

「営業の成功のポイントは『7割聞いて、3割話せ』。情報収集することで相手を知り、そこで初めて自分の武器、つまり商品やサービスを出します。戦だって相手を知ることが最も大切なこと。情報収集することに営業成功の7割の秘訣が隠されているといっても過言ではありません」

もちろん、最初の5分、10分で自分の目的を伝えるのには、50枚にも及ぶ資料などは不必要だ。先日もあるサプライヤーとの商談に臨んだ際、田中さんが机の上に置いた資料はたったの4枚だった。取引口座の開設で相手が受けるメリットなどを示したグラフが1枚に1つあるだけ。もし、商談が進んで別のデータが必要になれば、別途用意していた資料を鞄のなかから取り出すようにしている。

吉野さんも、「パワーポイント(以下、パワポ)のデータをすべてプリントアウトしてお客さまに事前に渡してしまう人がよくいます。でもそうすると、お客さまはパラパラと見ただけですべてがわかった気になって、こちらの話を真剣に聞いてくれなくなります。ですからいきなり全部お渡しするのではなく、30%程度に抜粋したものをプレゼン後に確認資料として手渡すようにしましょう」とアドバイスする。

パワポの内容については「“レス・イズ・モア”(一面に掲載する情報は少ないほどよく伝わるという意味)に徹しましょう」と吉野さんはいう。1枚に1フレーズが基本。字の大きさは、44ポイントを標準に、最小で24ポイント、最大でも60ポイントと決めているそうだ。相手の話を聞くことが商談、プレゼンを成功に導くポイントと心得えよう。

【○】御社の生産コストを10%ダウンする製品をご紹介します。
【×】弊社は2002年創業で、技術力には定評があります。

プレゼン話し方研究所社長
吉野真由美
同志社大学卒業後、生命保険会社などを経て英語教育会社に入社。12年間連続でセールス上位入賞。2005年、プレゼン話し方研究所を設立し現職に就任。
 
ロコンド代表取締役社長
田中裕輔
2003年、一橋大学卒業後にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年1月、株式会社ジェイド(靴の通販サイト ロコンド.jp)の創業に参画。同年2月から現職。著書に『なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?』がある。
 
1st Avenue代表
マンジョット・ベディ
1969年、インド生まれ。17歳のときに来日。2006年、1st Avenue設立。クリエイティブ・ディレクターとして多方面で活躍している。
(加々美義人、澁谷高晴、坂井 和=撮影)
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