【山崎】そういう世界に、僕らはデザイナーとして入っていったんです。都市計画の人たちが考えるまちづくりって圧倒的に正しいのですが、どうも楽しくない。僕らはむしろ「ここに集まりたい?」とか、「これっておしゃれだよね」といった、一般市民の感覚を持ってアプローチしていったんです。

【森川】まさにLINEの役割もそこにあって、地味で真面目で平凡な人生を歩んでいる人が、伝えたいことをしっかり伝えていくツールなのです。従来のSNSって「世界の中心で叫ぶ」タイプが多かった。自分のいい部分だけをセレクトして、それをより多くの人に伝えたいというニーズを満たしてきたのだと思います。

【山崎】フォロワーを増やすとかね。

【森川】一方LINEは、拡散ではなく、大切な人と気持ちを共有してほっとできることを目的にしています。

言葉にならない気持ちを伝えられるツール

【山崎】ところで、森川さんご自身はエンジニアのご出身じゃないんですか。

【森川】実はエンジニア出身で、最初はプログラマーをやっていました。ただ、音楽が好きでずっと続けてきましたから、ロジックとアートの両方を理解できる(笑)。

【山崎】そうすると、LINEって音楽の世界に近いんですかね。

【森川】たとえば、理系、文系、体育会系で言えば……体育会系って戦う文化ですよね。戦うって、ライバルがいて、そいつに勝って、自分がナンバーワンになることですが、僕はサービスって戦ってしまうといいものにならないと思うのです。音楽は戦いの世界ではなく、コラボレーションや共感の世界ですよね。戦わないコミュニケーションという意味では、LINEと音楽は似ているかもしれません。

【山崎】戦わないって、面白いですね。たしかにコミュニティデザインをやっていても、もう戦っても仕方がないでしょうっていう局面がよくあるんです。一番わかりやすいのが商店街の商売敵。いま、地方の商店街の多くが壊滅的な状態にあって、もはや内部で商店同士が戦っている場合じゃない。「戦わない」って、まちづくりにとっても重要なキーワードだと思いますね。