初代電動アシスト自転車の発売から20年。ゼロだった市場をどのように広げていったのか。マーケティング理論に基づき、4つの視点から見ていこう。

3.「価値ベースの値付け」で値崩れ防止

電動アシスト自転車は安いものでも7万~8万円、最も売れているモデルは12万~13万円である。普通の自転車の10倍以上だ。なぜ高くても売れるのだろうか。

「たとえば電動アシスト自転車が10万円とします。高校生が電車とバスで通学する場合、3年でどちらが得か、ということです」

そう話すのはパナソニック サイクルテック社長の小黒秀祐氏である。

「弊社のお客様も、どうせ買うならしっかりしたものや機能の優れたものをという意識が強いですね」

ヤマハ発動機SPV事業部マーケティング部PAS営業企画グループ・石井謙司氏もそう語る。ヤマハのPASも一時期7万円程度まで値下げをしたときもあるようだが、その後改良で走行距離が伸びるにつれ、結局高価格だが高性能な機種が売れ筋となったようである。

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「顧客価値」に基づく値付けの仕組み

電動アシスト自転車は体力不要で長距離乗れるため、「普通の自転車」とは競合していない。これまで市場になかった商品だからこそ「消費者から見てメリットがある価格」で値付けがなされてきたのだ。しかし市場が成熟するにつれ、価格競争は必ず生じてくる。

「現在の商品は、10万円以上から価格がおりてこないんです。その意味では10万円を割ったところの市場が空いている。そこを狙いました」

ラオックスの執行役員商品開発本部長の渡邊崇氏は言う。ラオックスといえば家電量販店のイメージが強いかもしれないが、現在は中国企業資本のもと、売れ筋の商品を設計して中国で生産し国内の流通に卸すODM企業・商社に変貌している。

「機械ものでコストがかかりますから、あまり安いものにいきすぎると品質が悪くなってしまう。我々が自信を持ってご提供するのは5万~7万円ぐらいの中価格帯です。それも中国でつくったものに当社がブランドロゴだけ貼って売るのではなく、仕様・品質も含めてすべてコントロールしており、実質は本格的なメーカーに近い動きをしています」

電動アシスト自転車は消費者が長期にわたり使用する商品であるため、安易に始めても続かないと渡邊氏は話す。日本・中国という2つの異なる市場経済、文化・慣習を融合させることで強みを発揮するラオックス。性能も重要だが価格にも敏感な消費者がどう評価するのか。参入から1年、現在は「タスカル」ブランドで5モデルを販売する同社の動向に注目が集まる。