初代電動アシスト自転車の発売から20年。ゼロだった市場をどのように広げていったのか。マーケティング理論に基づき、4つの視点から見ていこう。

4.既存の売り方にこだわらない

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メーカー別主要なチャネル

アマゾンや楽天で「電動アシスト自転車」と入れると多数の商品がヒットする。いまやネットでも買える商品になっているが、ネットでの販売は「1割未満」(パナソニック サイクルテック)と意外な回答であった。

「6割前後は量販店です。つまり、大型自転車専門店、家電量販店、GMSやホームセンター。4割ぐらいが一般の自転車屋さんだと思います」

と、パナソニック サイクルテック社長の小黒秀祐氏は話す。性能を体感して選ぶ商品であり、購入後も保守メンテナンスが必要なことから、ネットや量販店が必ずしも有利ではないようだ。

20年前の状況はどうだったのだろうか。ヤマハ発動機SPV事業部マーケティング部PAS営業企画グループ・石井謙司氏は言う。

「初めての商品なので慎重にいこうという方針でした。保守メンテナンスができることを重視しましたが、必ずしもオートバイ販路ではないだろう、と。そこで『PASショップ』という販路を確立しました。アフターサービスのプログラムを構築して、当社が教育・研修を行った。既取引のオートバイ販路だけでなく、自転車販路も数多く参画されました」

保守メンテナンスができるチャネルをゼロから構築したことにも、同社の取り組みの本気度が表れている。

ブリヂストンサイクルでは少し状況が異なるようだ。

「スーパーや量販店よりも、うちは地元に密着した自転車専門店が強いですね」(ブリヂストンサイクル マーケティング1部 商品企画課長 瀬戸慶太氏)

自転車メーカーならではの視点で女性向けのクチコミサイト「ベネッセウィメンズパーク」や雑誌とタイアップしながら、独自のプロモーション活動を展開している。

「ママチャリ界の高級車みたいなイメージづくりをしてきました。子乗せモデルについては、ベビーカーの売り方も参考になりました。保育園や幼稚園という集まりの場があるので、そこでの口コミの力が強いんです」