読後感のいい1冊だ。「週刊プレイボーイ」の名物編集長として名を馳せた著者が、かつて自分が担当した柴田錬三郎、今東光、開高健が憑依したかの勢いで吠えまくる。語り口はとことん直截で、何を根拠にと突っ込みたくなるような個所もあるが、妙な説得力で押し切った。

本来、人生相談ほどいい加減なものはないと思う。学生に何か助言した後、今のでよかったのだろうかと自問してしまう小心者の私にとって、短い質問文やちょっとしたインタビューだけで、「ああしなさい、こうしなさい」と断言できる神経がどうにもわからない。

本書が抵抗なく読めたのは、相談者が(例外もあるが)あまり切羽詰まっておらず、むしろ回答者・島地勝彦とのやり取りをただ楽しんでいる風情があるからだ。「シマジ」なら何て答えるだろう? 相談というよりもお題を出す感じである。

上司からの評価の低さを嘆く相談者には、こんな回答。

「才能や努力が評価されない。人生はそういう恐ろしい冗談に満ち溢れている。だが、こればっかりは仕方ないと思うしかないね。正しいことが報われない。だから『神も仏もない』と恨むのではなく、恐ろしい冗談のような世界だけど、神様は俺のことを見守っていると感謝して、自分を律して前向きに生きることが大切だ。『1人の時間を慎む』というやつだよ。他者ではなく、自分あるいは神様が評価する時間こそ大切にしなければならない」

……今のは意図的に教訓的な回答を取り上げた。書名からもわかるように、相談内容の8割方は男女関係がテーマで、いわゆる下ネタも多い。「40代でぶり返した性欲をどう処理したら良いか」という問いには、「朝立ちしない奴には金を貸すな」という明治時代の俚諺を引いて、相談者の精力をまずは称賛。そして、「その気持ちを明るく元気にカミングアウトすれば、いつか興味を持ってくれる女性が現れるはずだ」と結んだ。おおむねこんな感じなので、何か役に立つ情報を求めて本書を読むとガッカリするだろう。シングルモルトへの傾倒、パンツや靴へのこだわり。興味のない人にはどうでもいいような話も多い。伊集院静氏に「作家の血を全部吸い取ったドラキュラ」と評された怪人物、最後の無頼の咆哮をただ面白がり、楽しむのが正しい読み方だと思う。

ところで、本書では「ミツハシ」なる話の聞き手が重要な役割を果たしている。元になるウェブでの連載を編集したのもこの人物だ。脱線するシマジを上手に制御し、時に話題を変え、要所では異論もはさむ。そこがまた掛け合い漫才のような面白さを演出している。実際は超気くばりの人であることが透けて見える島地勝彦は、あえて暴走老人を演じ、調整役をこのミツハシに託した。約20歳年下の三橋英之(前「日経レストラン」編集長)に、かつての自分の姿を見ているのかもしれない。