時事通信フォト=写真

九州電力社長 瓜生道明(うりう・みちあき)
1949年生まれ。大阪大学大学院修了。75年九州電力入社。取締役常務執行役員、副社長などを経て2011年社長。


 

国内の原発全50基が停止したまま、電力会社はこの冬を迎えた。再稼働を目指し、5社計14基の原発が原子力規制委員会の安全審査を受けているが、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)は最初の再稼働候補として有力視されている。活断層の疑いがなく、敷地が高くて津波で浸水する恐れも小さいからだ。火力発電所による代替で燃料費がかさみ、電力各社は収益悪化に苦しむ。九電は2013年3月期連結決算で、最終赤字3324億円と過去最大の赤字を出した。「速やかな原発再稼働を強く望む」と強調する瓜生道明社長は、安全審査の進展に全力を注ぐ。

瓜生氏が社長に就任した11年4月、九電は佐賀・玄海原発のやらせメール問題で混乱の最中にあった。これは、古川康佐賀県知事が当時の九電副社長に対し、「県民への説明番組には再稼働を容認する意見を出すことも必要」と発言したことから、九電社員が再開容認の意見を番組に投稿するよう子会社などにメールで依頼した事件だ。これが発覚し当時の松尾新吾会長、眞部利應社長が辞任。眞部氏が後継に選んだのは同氏と同じく技術系で、火力発電部門が長かった瓜生氏だ。

九電創立以来「60年かけてつくった信頼が崩壊した」と危機感を持つ瓜生氏。記者会見ではレーザーポインターを手に自ら丁寧に説明を尽くす。「震災前の九電社長は県知事よりも格が上との意識が強かった。今までの社長にはいなかったタイプ」(地元記者)との受け止め方が多い。今の難局を瓜生氏が切り抜けられるかどうか。「専門的な知識が豊富で説明力も高く適材」(メガバンク)との評価がある一方、「技術者肌で外部人脈や政治力が弱く、再稼働に向け自治体を説得できるか不安」(地元財界)との声も。瓜生氏の経営力の真価が試されている。

(時事通信フォト=写真)
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