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駐日米国大使 キャロライン・ケネディ
ジョン・F・ケネディの娘としてニューヨークに生まれる。父親の大統領就任に伴い、3歳でホワイトハウスに移り住んだが、5歳のときに父が暗殺される。コロンビア大学卒の弁護士。ケネディ大統領記念図書館の財団理事長を務めたのち、11月より現職。


 

「スイート・キャロライン」と流行歌にもなった故J.F.ケネディ元大統領の長女が初の女性駐日大使となった。馬車に乗っての「信任状奉呈式」報道は皇室報道に近いノリだった。確かに、ケネディ家は米国政治史の神話であり超のつく資産家の「米国版ロイヤルファミリー」。おかげで「外交素人であり、北朝鮮や中国と外交的緊張を高める日本の大使としては力不足」「日本への侮辱であり、プロ外交官への打撃である」といった米国内の当初の酷評は、日本人の耳にあまり届いていない。

弁護士資格を持ち、慈善事業や非営利活動に携わってきた。温和で控えめな印象で、2009年、国務長官となったヒラリー・クリントン氏の後継上院議員への意欲を見せたものの「家庭の事情」で辞退した消極さは、初の女性大統領への野心を隠さないクリントン氏とは対照的だ。だが08年、大統領選の民主党候補者指名をめぐる熾烈な争いの中で、無名のオバマ氏に対し「父ケネディの後継にふさわしい」といち早く支持表明し、オバマブームに火をつけた政治センスには高評価がある。沖縄基地問題やTPP交渉を抱える日本の世論を親米に導くのが最大任務だとすれば、単なる論功行賞人事以上に適材人事だ。そのカリスマにひかれて米国議員・要人の「日本詣で」が増え、途絶えていた日米議員交流が活性化するというサブ効果も期待されている。

おりしも、生前、米大統領としての初訪日を望んでいたJFKの暗殺50年目。着任に当たり「父が残した公務を引き継ぐことを誇りに思う」と語った。血統の政治効果が感覚的に知られている日本だからこそ送り込まれた「米国政治の神話」の娘は、日米同盟強化を軸にしたオバマ政権のアジア回帰戦略の象徴となるかもしれない。

(時事通信フォト=写真)
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