決して遊んでいるわけではなく、一生懸命やっているのに目先の出来事に追われ、本来やるべき仕事に着手できなかった経験は誰でも持っているはずだ。別の言葉でいえば、完全に空回りしてしまった状態。それが出来事にコントロールされた状態である。

研修でタイム・マネジメントのスキルはライトな扱いをされる場合が多いが、実はそれがなければ生産性が下がり致命的になるという性格のものだ。タイム・マネジメントに取り組むのは、自分が出来事をコントロールする側に立つことを意味する。取り組まないのなら、出来事によってコントロールされる道を選択したということだ。

とはいえ、目的を考え目標を立て、1週間を計画していくという作業はかなり手間ひまが必要で、忙しい日々のなかでは追いつかないかもしれない。ただ、そんなタイム・マネジメントをあきらめてしまいそうな状況でも、1つだけやっていただきたいことがある。1日の1%はどのくらいの長さだろうか。1日は24時間で、分単位では1440分。したがって1%はおよそ15分である。

前述したように研修で「1日に追加で1時間あったら何をしたいか」と尋ねると、多くの人から家族との団らんや勉強、読書という答えが返ってくる。それらが大切と思いながら毎日の生活で実践できていないわけだ。

では、果たして何分あったらできるだろうか。たとえば家族との時間を30分とっても実は1日の2%でしかない。英会話スクールを1時間受講するとしても1日の4%にすぎない。本当に1日の1%や2%の時間も確保できない人は、まずいないのではないか。

だから非常に忙しく、本稿でここまでにお伝えしたことがうまくできなかったとしても、1日の1%の時間は意識的に計画を立て、必ず自分自身の価値観に根づいたことをやり続ける。そのように自分と約束していただきたい。

なぜ自分と約束するのかというと、誠実さの発揮につながるからである。ここでいう誠実さの意味は英語のintegrityで、その語源は「言っていることとやっていることが一致している」ことである。