敵役は「従来の問題点」

たとえば、PCやたくさんの資料を持ち運ぶビジネスマンにとって、鞄が重くなる問題があるとしよう。ゴロゴロと転がす滑車がついたキャスターだと、アタッシェケースのように横に倒して中身をとりだすのが面倒だ。そこで、中が蛇腹になっていて、上部ファスナーを開くだけで書類がぱっと取り出せるキャスターが誕生した。しかも、外がしっかり固いためにPCを入れても心配がない。たとえばこのカバンを紹介するために、ストーリーの型にあてはめてみるとどうなるだろう。

問題点  = 肩にかける書類鞄は重く、キャスター型は中身が取り出しにくい
敵    = ビジネスマンを疲れさせ、スマート感をなくす鞄
ヒーロー = 肩に負担がなく、取り出しやすく、PCにも安心な自社製品

自分たちが解決したい、あるいは世の中の人が改善を求める問題点から、従来の製品の使いにくさが「敵」とみなす。それを解決してくれる正義の味方のヒーローが自社製品だ。たとえば「重くて使いにくく、スマートさを奪う鞄の存在」という”弱点”を指摘して、「ならばどうすればいいのか?」「従来は横に倒して開けたアタッシェケースをファスナーにして、中に蛇腹を付けたことで、上部ファスナーを開けるだけで資料が取り出せ、キャスターでも持ち運べるようになりました」という、今までにはなかった解決策を提示することで、自然と自社製品のメリットが浮かびあがってくるだろう。これをストーリー仕立てにするだけだ。

また、「ならばどうすればいいか?」といった問題提示の仕方は、ストーリー展開にちょっとしたサスペンス感とでもいうような緊張感をもたらせてくれるだろう。しかも、相手に問いかけることで、聞き手の意識もあらためて話に向けられ、話へ引きつけやすくなるはずだ。