6月23日現在、移転先の具体的な場所と工法は未定。環境影響評価書も未完。絶滅危惧種ジュゴン保護で辺野古基地建設に待ったをかけた2008年のの米連邦地裁の中間判決も、いまだ本判決に至っていない。米上院も海兵隊グアム移転費の単年度政府原案を大幅削減。そして、地元の民意は依然、反対で盛り上がっている。
10年末までのタイムテーブルも、共同声明の実現可能性を左右する変動要因で目白押しだ。7月の参院選。8月末の具体的な場所・工法の決定。9月の地元名護市議選と菅首相の任期。11月の沖縄知事選。知事は、埋め立てが必要となった場合、その許可権を握っている。
これらの問題と今後の方向性に影響を与える選挙日程が、相互にもつれ合いながら進むなか、新政権はその複雑なパズル解きに難航しながら舵取りを進めていくことになる。
菅首相は「(知事の許可がない場合でも)『特措法』での強制着工はしない」と言明しているため、名護市議選と知事選が辺野古建設に反対の形で決まれば、新政権は普天間基地の継続か日米協定破棄のいずれかを選択しなければならない。その際、首相が前言を翻して強制着工の手続きに踏み込めば、現場でトラブルが発生し、住民や関係者の血が流れる懸念もある。
軍事ジャーナリストの吉田健正氏は、「もし、抵抗が続くなかで政府が無理矢理に工事を進めようとすれば、反基地運動に繋がり、日米関係にも響きます。その可能性が出てきたら、米側も県内移設なき普天間閉鎖に持っていかざるをえないのではないでしょうか」
あるいは新政権が粘り腰をみせれば、根負けした米側が辺野古を諦めることもありうる。その場合、「代替施設」と「普天間返還」を、あらかじめ米側との交渉で切り離しておくことができるか否かで、普天間返還の成否も決まる。