謎の使命感に駆られて仲間同士で中傷し合う

「異端は異教より憎し」という格言がある。思想や宗教の領域では、自分と主義主張が似ているが、考えが徹底されていない(ように見える)人のことを嫌う「同族嫌悪」が生じる傾向がある。

「批判しづらい相手こそ、きちんと批判しなければ」「ここで闘わなければ、フェミニズムは壊れる」という謎の使命感に駆られて、仲間同士での凄惨な叩き合いや中傷合戦を繰り返す。

意見の異なる「敵」に対する暴力の正当化は、「運動内部の敵」=仲間に対する暴力行使へと容易に結びつく。そして、暴力の正当化によって獲得された秩序は、その維持に再び暴力を要求する。

内部抗争を繰り返す過程で、被害者は去り、加害者は残り続ける。被害者視点が失われ、加害者視点だけが濃縮還元されるため、内部で起こった問題は半永久的に表面化しない。

ツイフェミ思想の源泉は130年以上前にまで遡る

こうした「フェミニズムが許せない」というツイフェミの怒りには、思想的・歴史的な背景がある。

ツイフェミと呼ばれる女性たちの動きが活発化したのは、文字通りツイッターが普及した2010年代以降のことであるが、歴史的に見ると、ツイフェミを駆り立てる思想の源泉は、130年以上前にまで遡る。

2019年3月、性暴力に対する無罪判決が相次いだことを契機に、全国各地で性暴力に抗議し、被害者の痛みを分かち合おうと花を手に集まるフラワーデモ(@_flowerdemo)が行われるようになった。

フラワーデモの呼びかけ人である作家の北原みのり(@minorikitahara)は、2017年に『日本のフェミニズム since1886 性の戦い編』(河出書房新社)を刊行している。

同書には、男性による女性や少女の性的搾取に対する批判を繰り返すことで多くのツイフェミから支持を集めている社会活動家の仁藤夢乃や弁護士の太田啓子(@katepanda2)らが寄稿している。副題にある「1886」とは、キリスト教系の日本の女性団体「日本キリスト教婦人矯風会」(以下、矯風会)が設立された1886年(明治19年)を指している。

矯風会は、禁酒と男女同権=一夫一婦制と婦人参政権の獲得、そして公娼制度の廃止を掲げて活動を行っていた。宗教的道徳観に基づき、「醜業婦」(=公娼制度の中で働く女性たち)を救済し、正しい道に復帰させることを目指していた。

売春の原因は法規制の欠如と社会の貧困にあるとし、売春を法律で禁止した上で、社会が経済的に豊かになれば必然的に売春はなくなると考えて、売春防止法の制定に尽力した。