反対に、口の軽い人間までをも仲間として引き込んでしまうと、組合設立の動きが会社にばれてしまう危険性が大きい。事前に潰されてしまわないためにも、しっかりした人間観察眼が問われます。

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労働組合設立にはオモテとウラの条件がある

また、アピールする技術も重要です。

「組合をつくりたい」という人には、一人よがりの正義感で突っ走ってしまい、周囲の理解を得られていない人が多い。仲間の輪を広げるには、たとえば「働きやすい職場環境をつくるためにはどうしたらよいのか」といった、わかりやすい言葉で仲間に訴える技術も必要となります。

労働組合を公然化させる際は、可能であれば会社の経営陣が一枚岩でないタイミングを狙うとよいでしょう。派閥抗争などで経営陣が“揺れて”いるときなどは、役員の一部が組合に味方してくれる可能性だってあります。

いずれにせよ、深く静かに事を進め、態勢が整ったら一気に公然化、間髪おかずに交渉の申し入れ――といった流れが理想です。社長に組合の設立を報告に行った際、社長から「俺は組合なんか嫌いだ!」とか、「そんなもの認めんぞ!」と怒鳴られたらこっちのもの。そういった発言を証明できれば、不当労働行為などの裁判になった際、組合側に有利な状況証拠にもなります。

なお、これらを仲間だけでやりとげる自信がなければ、私たちが運営している管理職ユニオンのような個人加盟型の労組に加入してしまうといった方法もあります。個人加盟型の労組は会社にとっては「部外者」ですが、部外者が交渉に入ると、交渉がスムーズになる。逆に、組合にあえて部外者を入れて、組合の代理人として交渉に加えることも効果があります。

(安田浩一=構成)