「ヒアリングと観察」が飛ばす大ヒット

同社の快進撃は、実はコロナ禍以前に始まっていた。まず、2015年に子どもが遊べる「毛糸ミシンHug」を発売したこと。本体のガイドに沿って毛糸を引っ掛け、布を送ると毛糸が布の繊維に絡みついて2枚を圧着できる。クリスマス需要の波に乗り、2カ月で2万台を完売し、現在ではシリーズ累計で15万台以上が売れている。「ロングセラーで、子ども用ミシンの市場を作った製品です」と山﨑社長。

「毛糸ミシンHug」のガイドに毛糸をかけて布を送ると簡単に毛糸で縫い合わせられる
「毛糸ミシンふわもこHug」のガイドに沿って毛糸をかけ布を送ると簡単に毛糸で縫い合わせられる(撮影=プレジデントオンライン編集部)

「子育てにちょうどいいミシン」を構想したきっかけは、販売促進イベントで毛糸ミシンを使って遊ぶ子どもを、母親がうらやましそうに眺めるのを見たこと。改めて考えてみれば、なぜか周りの子育て世代の女性はミシンを持っていない。そこで30~40代の母親たちにヒアリングを行ったところ、「家庭科の授業でミシンを習ったときに、難しくて苦手になった、という話で盛り上がるんですよ。『やりたいけど、私にはできない』と思い込んでいる方が多いことに衝撃を受けました」と話す山﨑社長。

阿古 真理(あこ・まり)
生活史研究家

1968年生まれ。兵庫県出身。くらし文化研究所主宰。食のトレンドと生活史、ジェンダー、写真などのジャンルで執筆。著書に『母と娘はなぜ対立するのか』『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『「和食」って何?』(以上、筑摩書房)、『小林カツ代と栗原はるみ』『料理は女の義務ですか』(以上、新潮社)、『パクチーとアジア飯』(中央公論新社)、『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』(NHK出版)、『平成・令和食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』(幻冬舎)などがある。