※本稿は、グレッグ・マキューン『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
「全部できる」は嘘
エッセンシャル思考は、より多くの仕事をこなすためのものではなく、やり方を変えるためのものである。そのためには、ものの見方を大きく変えることが必要になる。
ただし、それは簡単なことではない。慣れ親しんだやり方(そしてそれを当たり前と思う人びと)が、つねに私たちを引きずり戻そうとするからだ。
エッセンシャル思考になるためには、3つの思い込みを克服しなくてはならない。
「やらなくては」「どれも大事」「全部できる」――この3つのセリフが、まるで伝説の妖女のように、人を非エッセンシャル思考の罠へと巧みに誘う。
うっかり耳を傾けようものなら、不要なものごとの海におぼれることになる。
エッセンシャル思考を身につけるためには、これら3つの嘘を捨て、3つの真実に置き換えなくてはならない。
「やらなくては」ではなく「やると決める」。
「どれも大事」ではなく「大事なものはめったにない」。
「全部できる」ではなく「何でもできるが、全部はやらない」。
この3つの真実が、私たちを混乱から救い出してくれる。本当に大事なことを見極め、最高のパフォーマンスを発揮することが可能になる。
非エッセンシャル思考の罠から脱け出し、エッセンシャル思考のコアとなる考え方を身につけたとき、エッセンシャル思考のやり方は第二の本能のようにしっくりと体になじむことだろう。
どの問題がいちばん重要か?
エッセンシャル思考の基本となる3つの考え方のひとつに、「トレードオフ」がある。
すべてを手に入れることはできない。何もかもやるなんて不可能だ。何かを選ぶことは、すなわち何かを捨てること。「どうやって全部終わらせようか」と考えるのをやめて、「どの問題がいちばん重要か?」と考えよう。
1972年にタイムスリップして、S&P500(アメリカの主要銘柄500種)の全社に1ドルずつ投資したとしよう。その後の30年間で、もっとも多くの収益をもたらしてくれるのはどの企業だろうか。GE、IBM、それともインテル?
金融情報誌『マネー』によると、答えは意外な企業だった。格安航空会社のサウスウエスト航空だ。
利益を出すのが難しいと言われる航空業界にあって、サウスウエスト航空は毎年めざましい業績を上げつづけた。その秘密は、創業者ハーバート・ケレハーのエッセンシャル思考にあるようだ。