治療は抗菌薬の投与が基本

百日咳の治療は、マクロライド系抗菌薬を投与するのが基本です。クラリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシンが選択されることが多いですが、小さい乳児では肥厚性幽門狭窄症を起こすことがあるので、エリスロマイシンは使われません。他に咳を軽くしたり鎮めたりする鎮咳薬や去痰薬が処方されることが多いです。

乳児が哺乳できなかったり、夜に眠れないほど咳がひどい場合は入院です。少し大きくなっても、咳で食欲がなく眠れなかったら、小児科に行きましょう。たまに「ここのクリニックでよくならないから」と違うところを転々とする親御さんがいますが、原因が百日咳だとわかっている場合は意味がありません。「通院しているのによくならない」と伝えて、同じ医療機関にいくのがいいでしょう。レントゲンを撮ったり大きな医療機関を紹介してくれたりするでしょう。脳症を疑うような症状が出たら救急車を呼びます。百日咳による脳症の場合も、他の脳症と同様に、意識障害、けいれん、異常行動、異常運動、無呼吸などの症状が現れます。

現在は第一選択薬であるマクロライド系抗菌薬に耐性のある百日咳菌が増えています。そのため、死亡例も出てしまいました(※1)。耐性菌が出るたびに、次々に別の抗菌薬で対抗するのは限界があります。ワクチンは耐性菌に対しても有効なので、百日咳対策においてもっとも効果的なのはワクチンなのです。

※1 毎日新聞「『百日ぜき』生後1カ月女児が死亡 耐性菌に感染、基礎疾患なし

昔は多数の人が亡くなった百日咳

日本に百日咳ワクチンがなかった1940年代には、年間10万人以上もの人が百日咳にかかり、そのうちの約10%もの人が亡くなっていました。現在とは桁違いですね。昔は、命を失うこともめずらしくない病気だったのです。

その後、1954年に百日咳・ジフテリアワクチン開始、3種混合ワクチン(DPT)が導入されて1968年に定期接種になると、患者数は激減しました。3種混合ワクチンというのは、ジフテリア、破傷風、百日咳を予防するワクチンです。

しかし、1975年に3種混合ワクチンの接種後に2人の子どもが亡くなり、定期接種が一時的に中止されました。すると、たちまち百日咳の患者数が急増。1982年には定点報告だけで2万3675人が感染、多くの子どもが亡くなったのです。それよりももっと多くの子どもが百日咳が重症化したり、そうでなくとも感染によってつらい思いをしたのはいうまでもありません。その後、無細胞型DPTワクチンに変更になったこともあり、定期接種を再開して接種率が回復すると、百日咳の感染者は再び減少しました。なお、今では前述の死亡例はワクチンのせいではないということが、世界各国の研究で強く示唆されています。

【図表2】百日咳の届出患者数及び死者数の推移、1947〜1995年(厚生省伝染病統計・人口動態統計)
出所=国立感染症研究所 百日せきワクチンファクトシート