SNS等にある悪質なデマに要注意
最近、Instagramで「現代的な生活のために、子どもの免疫が壊されて百日咳菌に弱くなった」と主張している医療従事者がいました。そして「不自然な食事をやめる」「自然と触れ合って菌と共存できる体を育む」「本来の力をとり戻す」ことが大切で、ワクチンを接種したら本質から目を逸らすことになるというのです。
もちろん、この主張は大間違い。先に示した図表2からもわかるように、1950年代に患者数が減少したのは、ワクチンの普及、医療の発展と衛生環境の向上のおかげです。子どもが自然と触れ合って百日咳菌と共存できるようになったからではありません。
SNSやブログで「“予防”とつくものは全て不要」「感染症にかかったほうが免疫がつく」などと発信する人がいますが、感染してから治すのでは子どもが苦しむことになります。特に抗菌薬が効かない感染症にかかると危険です。ワクチン接種の目的は、感染して苦しまないこと、死なないこと。免疫をつけることは手段に過ぎないのです。ですから、ワクチンを受けていればかからないか軽症で済む感染症は、ワクチンで予防するのがベスト。感染症にかかって長く苦しんだうえに後遺症が残った子に「免疫がついてよかった」と言う人はいません。しかも百日咳やRSウイルス感染症のように、何度もかかる感染症もあるのです。
よく自分は「自然派」だからと医療を否定する人がいますが、自然の定義は不明瞭です。単なる思いつきをスマホでどんどん発信することが「自然」でしょうか。「自分の内なる声に耳を傾ける」「直感に従う」などと言えば聞こえはいいですが、医療も科学的根拠も歴史も知らず、人の命に関わるような事柄について根拠なく無責任な思いつきや陰謀論を撒き散らすのは、不自然で人の道に反した行為だと私は考えます。
ワクチンは何回いつ接種すべきか
では、百日咳ワクチンはいつ接種したらいいでしょう。赤ちゃんが生後2カ月になったら「5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)」を受けましょう。このワクチンは2024年に始まった定期接種で、ポリオとヒブも防ぐことができます。生後2カ月から約1カ月おきに3回、その後は6~18カ月あけて4回目を接種して終了です。以前、定期接種だった4種混合・3種混合ワクチンは生後3カ月から接種し、同様のスケジュールでした。現在は4種混合から5種混合への移行期間で、この2種類が混在しているため、小さいお子さんをお持ちの方は母子手帳を確認し、かかりつけの小児科にご相談ください。
ただ、百日咳ワクチンを含む3〜5種混合ワクチンは、病原体の感染力をなくした「不活化ワクチン」なので、生ワクチンに比べて効果が低下するスピードが速いのが特徴です。そのためヨーロッパのほぼすべての国、北米、オーストラリアなどは、百日咳を含むワクチンを定期接種で5回以上受けます。ところが、日本は4回のみ。日本小児科学会は、小学校に入る前に5回目として「3種混合ワクチン」と「不活化ポリオワクチン」を受けることを推奨していますが、希望者は少ないのが現状です(※2)。
なお、3種混合ワクチンは、いったん2012年に販売終了しました。すると、成人の百日咳が増えたことから、4回接種終了後に受ける場合の効果や用法・用量の検証がされ、2018年から再び販売されたのです。現在では年齢の上限なく自費で接種できます。妊娠中も接種可能で、そうすることで胎児に抗体が移行するというメリットも(※3)。そのほか、まだワクチンを受けられない小さい子や免疫力の弱い人と同居している人が接種すれば、本人が百日咳を予防できるだけでなく、百日咳の抗体価が低い家族にうつすリスクが減ります。4種混合および5種混合ワクチンは5回目として接種する場合の効果や用法・用量が検証されておらず、検証される予定もないので、日本で5回目以降の百日咳ワクチンを接種する場合、3種混合ワクチンしかすすめられません。
※2 日本小児科学会「小学校入学前に接種すべきワクチン」
※3 日本産婦人科学会「女性を脅かす感染症」


